表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/47

第36章

「……じゃあ、今からオーディションやるぞ。軽音部のボーカリストを正式に決めるためのオーディションだからな。候補者は三人。一人一曲ずつ歌うから、一番相応しいと思った奴の番号を紙に書いてから帰れ。わかったか」


 言うだけ言って全員、一旦舞台袖に引っ込んで幕を閉じた。和木坂が心配だった。


「おまえら、よくやった。竹田、楽しいか」

「うんっ」

「まあ全員ミスだらけだったが、音楽は楽しけりゃいいんだ。だから全員合格だ」皆でハイタッチを交わした。


「そんじゃオーディションだ。竹田は一番手だからな。フルートとピアノのあいつらにも準備させろ」

「わかった。もう来てるだろうし呼んでくるね」竹田叶の声は弾んでいる。吹奏楽部と合唱部からサポートを呼んで練習していたのだ。


 はっきり言って竹田叶の完成度はまだまだだが、さっき俺が言ったように音楽は技術じゃない。俺が負ける要素は十分にある。


 後は山田と菅山に任せ、俺は和木坂を探した。掃除用具の隣で壁にもたれるようにうずくまっていた。


「和木坂」

「あ、あ、あ、来ないで」

「どうした」

「お願い、だめ」


 和木坂は怯えているのか、俺さえ拒絶している。そのことに多少いらついたので無視して歩み寄った。やっと意味が分かった。和木坂は失禁していた。


 そんなことで俺を拒絶するな。


「あ、あ、すいません」

「……大丈夫だ。和木坂、すまなかった」

「あ、え?な、なんで謝るの?」

「おまえをこんなになるまで苦しめてる」

「ち違うよ、私が、私のせいで」


 憔悴しきった和木坂を俺は両腕で包んだ。和木坂の体は前に抱き上げた時より骨っぽかった。


「もういいんだ。苦しいのはやめだ。舞台なんか上がらなくていい」

「……でも、せっかく滝本くんがくれたチャンスなのに」

「和木坂、俺は口下手だ。だからおまえにうまく伝わってるのか分からない」

「滝本くん、私、もし歌えなかったら、滝本くんは」


 その時、不意に竹田叶の声が遠くで響いた。


「滝本ー、準備できたよ」


「……ここにいろ。寝てていい」俺は和木坂を残し、竹田叶の声がする方向に戻って行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ