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第35章

 舞台に出ると、声の塊が沸いた。


 体育館は完全に埋め尽くされていた。開いたままの扉から外のほうまで客がいるのが見える。三百人の時といい、竹田叶はどこからこんなに集めてくるんだ。


 俺はギターを微調整する。竹田叶も山田も菅山も、それぞれの準備をする。


 俺は一瞬だけ客に背を向け、深呼吸した。メンバーと目で合図する。準備完了の返事が来る。


「おし、おまえら始めっぞ。今日は最後に投票やるから協力しろよ」


 客はやたらでかい声で返事してくれた。


 一曲目。出足は抜群。多少走ったが、そのままの勢いで駆け抜けた。客はもうダイブしている。裸になってる奴もいた。


 二曲目。俺は二番の歌詞を若干とちったが、英詞だから多分誰も気づいていないだろう。ギターソロは自由に弾いた。はっきりしたミスもあったがそのくらいで良い。


「おまえら、今日はやけに元気だな」


 俺が少し水を口にした後呼びかけると、狂ったような大音量の返事が来た。


 俺は苦笑いしつつ竹田叶を見ると、ウインクを返してきた。こいつは度胸あるな。


「じゃあ次の曲は新人、竹田叶が歌うからな」今日一番の大歓声。


 三曲目。イントロは完璧だったが、竹田叶の声が弱い。やはり緊張してるかと思ったら、サビから別人のように立ち直った。


 ちょっと張り切って動き過ぎでマイクが拾い切れてないが、客の反応は良い。アイドルになら本当になれるかも知れない。


 四曲目。ボーカルは再び俺が担当。俺もかなり調子に乗ってきてソロのチョーキングを笑えるほど派手にやった。途中ベースラインが少し違ってたが、やはり誰も気づいてないだろう。


「じゃあ最後、つっても、この後のオーディションがメインなんだから帰るんじゃねえぞ」


 体温を持った声の塊が返ってくる。もう体育館が一個の生命体のようになっているような気がした。今日は珍しく照明係の演出も決まっている。


 五曲目。キーが俺にとってほぼ限界の高さなので、歌に集中した。そのせいで若干コード進行を間違えたが、言うまでもなくそんなことは誰も気にしてない。最後はジャンプして締めた。

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