第34章
そしてライブ当日。
放課後、旧体育館には他校の生徒やよく分からん奴らまでが集まり始めていた。どれだけ宣伝したんだ。
開演まで三十分、既に五百人は居る。ところどころでもう殴り合いに発展している。いちゃいちゃしてる奴もいる。
まずい。俺でも緊張してくるのに、和木坂が大丈夫なはずはない。和木坂は舞台裏で過呼吸になったりげろを吐いたり忙しく、座り込んで常に袋を口に当てながら、震える声でギターに何か話しかけていた。かわいそうを通り越して異様だった。
「和木坂、じゃあ俺らで先にバンドとしての五曲やってくるからな。まだ時間あるから、ゆっくりしとけ」
和木坂は無言で頷いた直後、また体をひくつかせて吐いた。
舞台に上がらせないほうが和木坂にとって幸せだったのかも知れないとまた思ってしまった。
「竹田、初ライブだな。行けそうか」
「あのさ、滝本、あたし、さっきから震えが止まらないんだけど……なんでかな?こんなの初めてだから、ちょっとびっくりしちゃって」
「大丈夫だ。うまくやろうなんて考えなくていい。やれるだけやってみろ。それで十分だ」
「う、うん。ありがと。……ちょっと安心したかも」
「スガ、今日は客が多い。俺に合わせなくていい。気持ち良く叩いてくれ」
「滝本君、また今更なんだけどさ、俺、いつも滝本君の声は負けてなんかねえと思ってる。だから言われなくても思いっきりやる気だよ」
「……そうか。山田は、上手くなったな。おまえはもう心配してない」
「へへ、なんか照れるな。まあうちにはラストエンペラーがいるから」
「何だそれ」
「この間、三百人相手に喧嘩して勝ったじゃん?あれから皆、滝本君をラストエンペラーとか言って恐れてるんだよ」
「ふっ、じゃあ俺は暴君だな」
「俺はもう、今の滝本君はそんなんじゃないと思うけど」
「お、俺もだよ」
「あたしもね」
「滝本君、何だかんだで和木坂と関わって優しくなったよな」
「黙れ。おし、そろそろ行くぞ」
「へいへいっ」
「あはっ、あの滝本が照れちゃって可愛い」
「竹田おまえ死ぬか?」
「きゃーやだよー死にたくないよー。ふふ」
「……行くぞ、おまえら」




