第30章
「じゃあ一ヶ月後にライブをやる。そこで俺と和木坂、竹田が一曲ずつボーカルをやって客を盛り上げた奴を正式にボーカルにする。どうだ」
「えっ、あたしもボーカル?」
「そうすれば出来レースにはならんだろ」
「でも滝本君、盛り上げた、って結構微妙な感覚じゃね?」
「オーディションにするつもりだ。終わってから客に投票して貰う。公平になるよう、決定権は客に持たせる」
「あたしがボーカル……」
「おまえだって人気は出るはずだ。客がおまえを選んだら、俺はおまえのためにコーラスやってやる」
「……待って。あたしまだ返事してない。ねえ、もう一つ条件つけていいでしょ」
「何だ」
「あたしがボーカルになったら、滝本はあたしの彼氏になること。文句ないよね?」
おまえは何を言っているんだ。意味が分からん。
しかしまあ、和木坂が歌えなかったとしても俺が勝てばいい。それだけの話だ。
「おまえがボーカルに選ばれたらな」
「ほ、ほんと?」
「ああ」
「あたし、本気出すから。今日から本気だからっ」
「ただ、裏で妙なことやって票集めたりしたら退部だ」
「は、はあ?意味分かんない。正々堂々やるに決まってんじゃん」
「まあいい。それじゃ、おまえは歌いたい曲を探せ。期限は一週間。演奏も早く練習しなきゃならんからな」
しかし、言ってしまってからまずい気もしてきた。竹田叶は外見だけは抜群だから、まず男の人気を集められる。そして女同士の交友関係も広い。こいつがまともに歌えるようになったら、俺では勝てないかも知れない。
まだ来てない和木坂にも伝えなければ、と思ったら和木坂は扉に寄りかかってげろを吐いていた。どのあたりからか知らんが会話を聞いていて、もう心を圧し潰されたらしい。
困った。




