第29章
「ねえ、滝本」
「滝本君」
「滝本君、俺たちの意見、聞いてほしいんだ」
旧音楽室に着くなり、竹田叶と、山田に菅山も俺に詰め寄ってきた。
「どうしたんだ」
「あの、俺たちさあ、滝本君に歌ってほしいんだよ」
「俺に?」
「滝本。あんたさ、真宇にばっかり歌わせようとしてるけど、あれ有り得なくない?歌えない子に無理やりなんてかわいそうだし」
「そ、それだけじゃねえよ。俺は、滝本君がボーカルで引っ張っていってくれるから軽音やってるようなもんなんだ。だから滝本君がどう言おうと、俺、滝本君にボーカルやってほしいんだ」
「このままじゃ、やりがいないよ。て言うか、真宇ばっかりひいきするのやめてほしいんですけど」
竹田叶はともかく、山田と菅山までが俺に言ってくるもんだから真剣に考えないといけなくなった。たしかに、こんな状態のままではまずい。こいつらは和木坂のために音楽やってるわけじゃない。
「和木坂には、歌えなかったら辞めてもいいって言ってある。たしかにボーカルがあんな状態じゃ、おまえらもやる気になりようがないな」
「そうだよ。あんなげろ女より、あたしのほうが歌だって上手いんですけど」
「しかし才能はあるんだ。そうじゃなかったら俺も歌わせようとしてない」
「才能?そんなの、出せないなら意味ないじゃん。あたし認めないから」
山田と菅山の顔を見た。二人とも気まずそうではあるが、気持ちは竹田叶と同じようなものだろう。
俺の勝手の所為でバンドが壊れようとしている。でも俺はどうしても和木坂を諦める気にはなれない。
と思った瞬間、大して良くもならない頭に一つの案が浮かんだ。




