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第27章

「どうした」

「あの、その」

「言え」

「あ、わ、わ私が部活辞めるって言っても……」

「俺は止めない」

「や、あの」

「何だ」

「……またここで、あの、会ってくれま、や、ななな何て言うか、その」


「なあ、俺の話、していいか」

「あ、え……え?う、うん。ごめんなさい」

「……俺も昔は、おまえと同じようなもんだった」




 勅使河原の家に生まれた俺は、三歳から毎日ピアノの練習をさせられていた。俺に才能はなく、親の期待は高過ぎた。


 七歳時のコンクールで県一位だったのが頂点で、そこから俺は期待に押し潰され、鍵盤を叩く指が動かなくなっていった。親にとっては、俺は勅使河原の恥であり屑だった。


 親に捨てられる夢を何度となく見た。誰にも見られない場所でげろを吐くのが日課になっていた。


 俺は誰に頼ることもできなかった故に、自身が強くならなければならないと思い始めた。


 そしてやっと自分の生き方を見つけられそうだった十四歳のある日、俺を屑扱いしていた連中は消えた。


 俺はただ自分で自分を肯定するだけでよくなった。俺を否定する連中がいなくなったからだ。


 俺は強くなった。しかしその強さというのも、弱い自分を受け入れられない弱さの表れなのかも知れない。弱さから逃げているうち、気がついたら高い所に上っていたというだけの話だ。


 俺が弱い人間を見下そうとする感情の正体は、弱かった自分に対する怒りなんだろう。


「……そういうわけで、俺も和木坂と同じようなもんだ。だから気持ちは何となくわかる。何となく、だがな」

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