第23章
「あ、あ、滝本くん、待って。お願い」
館内に響き渡った。和木坂が和木坂のまま、こんな大きな声を出したのは初めてだった。
俺は少し驚いて、竹田叶を壁に固定したまま和木坂を見た。
「和木坂?」
「……ごめんなさい。悪いのは私だから、叩くなら私を叩いてください」震えてるのに何故か、和木坂の声は強かった。
「悪いって、何を言ってる?」
「私が、ちゃんと否定しなかったから、竹田さんに勘違いさせてしまって……」
「はあ?な、何が勘違いよ。ちゃんと滝本は助けに来たじゃん。普通にあんたの彼氏じゃん」
「おまえは黙ってろ」
首にかけた手に少し力を込めると、竹田叶は涎を垂らしたまま静かになったのでその場に置いた。
「和木坂、悪いのは俺だ。こんな下らないことに巻き込んでしまってすまないと思ってる」
「あ、んん、真宇ちゃんが……私が、滝本くんにあんなひどいこと言ったから、きっと罰が当たったんだよ。本当にごめんなさい」
「俺は、おまえと一緒に音楽がやりたかった。今もそうだ」
「ごめんなさい、私、やっぱり自信なくて……でもね、真宇ちゃんはあんな言い方したけど、滝本くんが才能あるって言ってくれてすごく嬉しかった。でも私なんか、努力しようともしないし、夢を見る資格もないよね」
「なあ和木坂」
「え?」
「……音楽、やろう。俺と。俺が、守るから」
「でも、きっと迷惑」
「かけろよ。迷惑かけていいんだ。おまえの声、世界中に響かせようぜ」
しばらく誰も微動だにせず、少し経って和木坂は黙ったまま泣きだした。俺も鼻血を流しながら勢いで言った自分の台詞が恥ずかし過ぎて黙っていた。
「あの、じゃあひとつだけお願い、聞いてくれますか」
「おう」
「軽音楽部に、竹田さんも入れてあげてほしいです」




