第16章
思えばあの時、あの屋上の四人を殴ったままで放置したのと、保健室にいた数人に見られていたのがまずかった。
翌日、竹田叶が朝から教室にずかずか入ってきて「和木坂真宇ってどの女よ。出てきなさい」などと言ってきた。もう普段通りに登校していた和木坂は、何が起きたのかわからず青白くなっていた。まあ元からだけど。
「あんたが和木坂真宇?」
「あ、あ、あ、すいません」
「なんでこんなのが滝本の彼女なのよっ」
「は、あ、え、え?」
「滝本、説明しなさいよ。こんな女のどこがいいのさ」
「……おまえ、何言ってんだ」
竹田叶は一通り発狂して喚いた後「あたしは認めないから」と意味不明の捨て台詞を残していった。
俺が和木坂を庇ったのが竹田叶の耳に入り、何故か竹田叶は二人を恋愛関係だと思ったらしい。まあラブレター疑惑もあったしな。あの様子だと、今日中には校内の九割に勘違いが流布することになりそうだ。
予感は的中、和木坂は周囲から突然丁重な応対をされるようになっていた。まあこれだけ知れ渡ってしまえば、もう校内では和木坂に手を出す奴も減るだろう。
ただ問題は、俺の印象。和木坂みたいなのと付き合ってることにされたら舐められるのは確実。
軽音に誘ってることは嘘でもないから、余計な弁解は見苦しい結果に終わりそうだ。それに、言ってみれば俺があの歌声を好きになったのは嘘じゃない。俺は一計を案じた。
「おい和木坂」
「ひっ、あっ、あ」
「放課後ちょっと付き合え」
「あ、え、あ、あの」
「嫌か」ぶんぶんぶんぶん。
「じゃあ放課後な。逃げんなよ」
あれでは殆ど脅迫だ。もう少し俺も言葉を選べるといいんだが、どうもうまくいかない。




