久利生遥偉編 彼の基になった地球人の話
『黎明が上手にできないのは別に黎明の所為じゃないじゃん。だから私達がいるんでしょ?』
灯が口にするそれこそが、
<親が子供と接する時に留意するべき点>
だと俺も思う。親はついつい子供に対して過剰な期待をしてしまいがちなものの子供がその期待に応えられなくてもそれは子供の所為じゃない。人間は多くの場合<子供の頃>のことを正確に覚えていられないから、
『子供に何ができて何ができないのか』
も適切に判断できないことが多いそうだ。その上<親の欲目>で本来の子供の能力を上振れした状態で見てしまうと。ゆえに<評価基準>がそもそもフェアじゃないんだよ。
『親の評価基準がそもそもフェアじゃない』
のは『子供の所為』なのか? 俺は違うと思う。久利生はその辺りをフラットに評価しようとしてるだけなんだ。
「僕の両親は優秀な人達で、だからこそ僕の能力も正確に見抜けたんだと思う。そしてその上で自分達の子供がもっと優秀であってほしかったんだろうね。そんな両親の期待に応えられなかったこと自体はとても申し訳ないけど、でも今の僕は<久利生家の遥偉じゃない。ビアンカのパートナーで、灯のパートナーで、來のパートナーで、黎明の父親で、蒼穹の父親で、未来の父親なんだ。その上でルコアとケインとイザベラとキャサリンの父親なんだ。それを大切にしたい」
そんな風にも彼は言う。
自分を一人の人間として評価してくれなかった両親に対する恨み言も口にせず、それでいてかつての自分が感じていた侘しさを客観的に捉えて子供達に対しては同じ思いをさせまいと努力できる彼は本当にすごいと思う。俺の目からは<優秀>なんて言葉じゃ言い表せないほどの凄い人間だと感じるんだよ。
なのに彼の両親にとってはそうじゃなかった。彼の両親が求めていたのは期待していたのはそういう部分じゃなかった。それが残念で仕方ない。他所様のこととはいえ。俺が口出しできることじゃないとはいえ。
まあそれに、厳密に言えば、
<俺の知ってる久利生の家の話>
じゃないし、気にしても仕方ないのも分かってる。あくまで、
<彼の基になった地球人の話>
だ。いくら記憶があっても<ビクキアテグ村の久利生遥偉>とは別人なんだ。
俺達もそれはわきまえておかなきゃと思う。でも、取り敢えずはわきまえられてるからこの程度で済ませられてるのも事実か。<別人という認識>はこういう形でもメリットがあるのかもしれない。<オリジナルが経験した嫌な記憶やつらい記憶>についても気にし過ぎないでいられるという。




