久利生遥偉編 自分の愛する人が貶められてる
当人にとっては単なる<謙遜>のつもりであっても、もしくはただただ<話のネタ>的な<自虐>であっても、その人を大切に想う者にとっては<悪口>のように感じられてしまうことは確かにあるだろうな。
俺もそれは気を付けなければと思うものの<自分のこと>だからついつい過剰に辛辣になってしまうこともあるのも分かってる。分かってても<自分以外の人間の気持ち>なんてのは実際にはよく分からないからなあ。
『よく分からない』
のを認めて意識して気を付けないと自分を想ってくれている人を自分が傷付けてしまう場合もあるよな。
久利生でさえそういう形でビアンカを傷付けてしまうことがあるというのは残念であると同時に本音では『ホッとする』部分もあるのは事実。彼も同じ人間なんだと思えるということで。
そしてルコアも、
『自分がちゃんと子供を産んであげられるのか、育てていけるのか、みたいな不安ばかりを口にする』
のは、黎明にとっては、
『自分の愛する人が貶められてる』
ようなものだから、彼女としては、
「大丈夫! 私がついてる!」
と励ますしかないんだろうな。ビアンカのような<機微>までは備えていない、と言うか備えている可能性はあるにしても未熟ゆえにビアンカほどは詳細に言語化できないというのもあるのか。<具体的な展望>もなくただ口先だけで『大丈夫』とルコアを励ますしかできないのとも合わせて、黎明が『まだ子供である』証拠だとも感じる。
もちろん黎明自身は真剣なのは分かってる。本当に力になるつもりもないのに口先だけで『大丈夫』と言ってるわけじゃないのは確かだ。あくまで、
『真剣であること』
と、
『具体的な展望があること』
が一致するとは限らないだけで。
そう、黎明は、
『真剣ではあるものの具体的な展望を持たない』
ということなんだ。そして久利生もそれは分かっているし、未熟な今の彼女にそこまで期待するのはかつて自分が両親からされたことを娘に対してもやってしまう形になると承知しているから避けようとしているんだよ。
さらには、そんな久利生をよく理解しているからこそビアンカも灯も黎明に対して頭ごなしにあれこれ言うことなく見守ってくれている。
その分、お互いによく話し合うんだ。かなり<感覚派>な灯はビアンカほどは詳細に言葉を使って話し合うわけじゃないにしても。
ただ、
「黎明が上手にできないのは別に黎明の所為じゃないじゃん。だから私達がいるんでしょ?」
とは言ってくれてるんだよな。




