久利生遥偉編 大人の真似が上手い
『乏しい経験の中からそれらしいものを寄せ集めてでっち上げる』
子供でありながらたまにやけに大人びた振る舞いをするのもいたりするが、それはあくまで『乏しい経験の中からそれらしいものを寄せ集めてでっち上げる』のがたまたま上手くいってるだけなんだろうなと思う。
『大人の真似が上手い』
だけなのがほとんどなんじゃないだろうか? そして『大人の真似が上手い』のも結局のところ、
『大人の外面を真似るのが上手い』
だけのような気がする。当人が『大人に成れてる』わけじゃないと思うんだ。ごく稀に本当に精神的にも老成しているのがいるにしても、誰もが同じようになれるわけじゃない。特に黎明や未来についてはとてもそうなれるタイプじゃないのを感じるんだよ。
でもここじゃ『大人の外面を真似る』必要がない。そんなことを求められないししなくても問題なく生きていける。
『具体的なビジョンもなく口先だけでルコアを励まそうとする』
ことについても誰かに責められることもない。責める必要もない。すべてが<経験>なんだ。
まだ口先で励ますしかできない黎明にルコアの子供の世話を任せてしまうこともない。そこで任せてしまって万が一のことがあった時には誰が責任を取るんだ? どうやって責任を取るんだ? 責任を取れば<起きてしまったこと>が<なかったこと>になるのか? そんなはずはないよな。
だから俺達は、
『子供に子供の世話をさせる』
なんてのはしない。
『接してもらう』
だけで十分なはずなんだ。それだけでも大変な経験になるはずなんだ。その上でモニカやテレジアにサポートしてもらう。必要とあらばセシリアに行ってもらってもいい。一般仕様のメイトギアだからそれこそ<ベビーシッター役>はメイン機能の最上位として設定されているし。ただ、さすがに、
<サーペンティアンの赤ん坊の世話>
は標準ではインストールされていないが。でも、<個々人が持つ特徴>についても短時間で学習して適正化を行えるのもメイトギアの売りだから、上手くやってくれるだろうとは思う。それにルコアと接していたモニカやテレジアが蓄積したデータも取り込んでくれているし。
この辺りはロボットの強みだよ。他の機体が得たノウハウについてもまるで自分が経験したかのように再現できる。人間の場合は情報として得ていても自分自身に落とし込むには実地での経験が必要になるわけで。
久利生でさえ何度何度もシミュレーションを繰り返すのはそれが理由なんだ。




