表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3214/3230

久利生遥偉編 理想の在り方

『私がついてる』


そう言って口先だけで励ますことしかできない自分の娘についても、久利生(くりう)は別に諫めるようなこともしなかった。その必要がないからだ。


確かに『ただ獣のように生きていく』だけならもう十分な能力を持つものの『人間として生きていく』にはまだまだ人生経験が不足している黎明(れいあ)に、


<大人と同じだけの気遣い>


を求めるなんてのはおよそ<合理性>や<客観性>を備えた人間のすることじゃないからなあ。久利生(くりう)自身はそれこそ幼い頃から、


『大人と同じように振る舞える』


のが求められていてそれがどれほどの苦痛になるのかを身に染みて実感しているからこそ自分の子供達に対してはそれを要求しないんだ。


久利生(くりう)自身が言ってたよ。


「僕は両親や大人達が求めていることに応えられる人間であろうと心掛けてきた。それを果たそうと自分なりに努力してきたつもりだった。けれど今になって思えば<そう見えるための振る舞い>自体が両親をはじめとした<身近な者達の真似>でしかなかったのを痛感してる。


厳しく躾けられその通りに振る舞うことを求められてはいたけど、『どうすることが求められているのか?』の具体的なビジョンとして理解はできていなかったんだよ。あくまでも両親をはじめとした身近な者達の振る舞いを真似ることしか思い付かなかった。具体的なビジョンそのものを示してもらえた覚えもなかったしね」


と。


そうだ。子供に対して何かを期待し一方的に求めてくる大人は多いもののじゃあ具体的にどうするのがいいのかをきちんと示す大人は少ないそうだ。ただただ自分の頭の中だけで<理想の在り方>を思い浮かべるばかりで具体的な形としては示さないし示せない。にも拘らず<理想の在り方>だけは求めてくる。子供がたまたまそれに合致したものを示せればいいがそうじゃなかった時には責め立てる。


そりゃ反発もしたくなるよな。その苦い経験があればこそ彼は具体的な自信の振る舞いで<人としての在り方>を示そうとしてるんだ。けれどそれがそう易々と伝わるようなことでないのも承知してる。相応の時間を掛けて子供達自身が見聞きしたことを咀嚼して取り込んでいってようやく形になるものだと知っているからこそすぐに上手くできなくても責めたりしないんだ。責めたところでできるようにもならないし。


だから黎明(れいあ)の<ルコアに対する励まし>が具体性のない口先だけのものでしかない点についても咎めたりはしないんだよ。責めたところで反発するかもしくは乏しい経験の中からそれらしいものを寄せ集めてでっち上げることになるだけだろう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ