久利生遥偉編 実効性のある対処については
ちなみにルコアは<例の不定形生物由来の個体>なので当然ながら体のすべてが<透明>であり、おそらく普通の地球人の医師ではまともに手術はできないだろう。透明じゃない体を相手にしてるわけで。大まかな状態は経験で察することはできても細かな部分の詳細な状態については視覚的に上手く捉えることができないのは間違いない。
牙斬の一件で緊急手術を行うことになった時にはモニカやテレジアのサポートがあればこそなんとかなったというのは間違いなくある。ロボットの視界は人間のそれとは違って様々な波長の光を複合的に捉えるからちゃんと正確に結像することができるんだ。
それによって微妙な調整のための指示も出せるし出してくれた。だが今回は十分な準備時間があるからな。だったらより確実に久利生の力を発揮できるようにするべきだろう? 加えて今回のVRゴーグルは、
<単に仮想現実を投影するだけモニター>
じゃなく、
<複合的な情報を光学的な映像に変換して投影してくれるモニター>
でもあるんだ。もちろん光学処理して普通の<透明じゃない肉体>として見ることもできる。まあ本来は、
『照明器具などのトラブルにより普通の視界が確保できない状態を補う』
とか、
『患部を拡大したり映像を光学処理して状態を確認しやすく』
したりするための技術なんだが、ここ朋群では普段の医学的処置や手術などでも必要になる可能性を考えて、地球人社会で使われていたものに機能を追加したのを製造している。幸い、基本的な部分はここでも再現できたし。
なお、機能の見直しについては、レックスやシオがコーネリアス号に元々供えられていたものを研究のために使っていて、
<透明な個体をはじめとした朋群の生物特有の特徴を観察する際に気付いたあれこれ>
を報告してくれたのを基に行われている。
<日常的に観察を旨とする仕事ならでは意見>
が本当にありがたい。それが手術用として使われることになるのは副次的な利用法ではあるものの役に立つなら何でもありがたく利用させてもらうさ。
それでも、実際に妊娠し出産を控えているルコアにしてみると不安が完全に拭われることはないのも事実か。そこを、
「ルコア、私がついてる」
黎明が事あるごとにそう口にして励まそうとしてくれていた。まあ黎明に具体的に何ができるかと言われれば、
『実効性のある対処についてはなにもできない』
のは確かではある。でもそういうことじゃないんだろう。主にメンタル的な意味合いで。




