久利生遥偉編 運命を感じてしまった
久利生は、惑星探査チーム<コーネリアス>に出向という形で参加するまでは総合政府が持つ軍隊に所属する軍人だった。これは<オリジナルの久利生遥偉の実家>が長い歴史を持ち代々軍人の家系だったために厳格に用意された<道>だった。オリジナルの久利生遥偉自身は医師を志していたもののそれを選択することは許されず、あくまで、
<いずれ役立てることもあるであろう経験>
として期間限定で医師の仕事に就くことができただけだ。
それでも、老化抑制処置(久利生のオリジナル達が生きていた頃は健康寿命を百五十年にできる程度だったが)によって時間的余裕があればこそ期間限定ではあってもそれが許されたんだろう。健康寿命が六十年や七十年程度だった時代にはそんなことは認められなかっただろうな。認められたとしてもそれこそ二年とか三年とかの短期間だったかもしれない。それじゃよっぽど上手くやれたとしても医師になるだけで費やしてしまって実際に医師として働くことはできなかったんじゃないだろうか。
一応、オリジナルの久利生遥偉の場合は十年ばかり医師として働くことができたとのこと。
で、皮肉なことに久利生遥偉の医師としての才能はずば抜けていてすぐにエース級の存在になれたらしい。そしてその時に看護師として一緒に働いていたビアンカに想いを寄せられる流れになったと。
もっとも、医師と看護師だった時点ではあまり交流もなくビアンカの方も、
<久利生遥偉に熱を上げる看護師達の一人>
でしかなかったらしいが。しかし久利生家の長男として敷かれたレールに従い軍人になった久利生遥偉と、自分を変えたくて軍人になったビアンカとが同じ部隊に配属されて偶然再会して、ビアンカとしてはそれこそ<運命>を感じてしまったそうだ。
まあ無理もないか。
それでも、<オリジナルの久利生遥偉>と<オリジナルのビアンカ・ラッセ>は結ばれることはなかっただろうと思われる。久利生遥偉には<家>を捨てることができなかったがゆえに。
しかし、
<朋群人としての久利生とビアンカ>
にとってそんなしがらみは何の関係もない。ただお互いの気持ちのままに互いを求め合えばそれでよかった。
『転生した当人じゃない』
からこそそれを認めることができた。まあたとえ『転生した』場合であっても本来生きていた頃からは二千年以上の時間が過ぎていた上に地球人社会に戻る当てもない状況じゃ、<家>も<しがらみ>もまったく意味を成さなかったかもしれない。
さりとて、<転生した当人じゃないという認識>は大きな追い風になっただろう。




