久利生遥偉編 プロローグ
久利生遥偉は、七人の子供の父親である。もっとも血が繋がっているのはその内の三人だけで、しかもその三人ともがそれぞれ違う女性との間に生まれた子供だった。
こう書くとなんかいかにも<ロクでもない男>のようにも思えるかもだが、まあそれは俺も同じだからなあ。しかも俺なんて五人の女性の間に十五人もの子供がいたんだからむしろ久利生なんて可愛いもんだ。
地球人社会でならそれこそ非難轟々ってことにもなりかねないだろうものの、ここは地球じゃないからなあ。そして俺も久利生も、
<地球人としてのメンタリティを持つパートナー>
は一人だけだ。他は全員、地球人とまったく異なるメンタリティを持つ相手だから<地球人の常識>は通用しない。まあこれ自体が、
『言い訳だ!』
と非難されるのも分かってる。けど、ここではそうなんだからそんなものに耳を傾けるつもりもないし傾ける意味もない。むしろそんなものに耳を傾けるのは久利生や俺のパートナー達を貶めるのと同じでさえある。それは駄目だろう。言いたい奴には言わせておけばいい。俺達にはなんの関係もない。なにより久利生のパートナーであるビアンカも灯も彼を愛している。その彼を罵るのはビアンカや灯を罵るのと同じなんだよな。
そんな久利生は今、彼の子供の一人であるルコアの出産に備えて<医師>として準備を行っている真っ最中だった。
まあ厳密にはルコアは<久利生の子供>ではないものの彼女を保護しビアンカや灯と共に養育してきたのだから事実上の子供と言っても差し支えないと思うんだよ。ルコアの方も『お父さん』みたいには呼ばないものの事実上の父親として接してただろうな。
『自分の父親に出産の担当医になってもらう』
というのも地球人社会ではいろいろ気まずいかもしれないにせよ、ルコア自身はそこまで気にしてないようだ。久利生のことも普通に尊敬しているし。
<血の繋がらない娘同然の女性に尊敬してもらえる人物>
なんだよ。彼は。だからこそ非常に複雑な家庭環境にも拘わらず子供達は皆、ルコアと同じように父親を尊敬してくれている。
娘同然であるルコアに対して実子である未来と黎明がパートナー候補として名乗りを上げてるという極めて複雑な状況の中で。
だが、そんなことを気にして懊悩しているほど久利生は近視眼タイプでもない。今は自家受精によって妊娠したルコアを無事に出産させるために必要な努力を淡々と行っているんだ。
彼女の<主治医>として。




