黎明編 地球人の子供とは違う
ルコアが自家受精により妊娠して半年が過ぎた。妊娠が判明したのはまだ四ヶ月前だが実際に妊娠した時点からは排卵周期を基に考えてそのくらいだと推定されている。サーペンティアンの排卵周期は地球人のそれとは異なっていて二ヶ月毎くらいなんだそうだ。
非常にプライベートかつセンシティブな情報ではあるもののそれはあくまで地球人社会でかつて様々な誤解や思い込みから生じた偏見などがもたらしたものだから、ここでは最初から正確な情報を明かしておくことで誤解や思い込みを極力なくしていきたいんだ。そうすればこの種の情報もただの、
<自分達を理解するための必要な情報>
でしかなくなるはずだし。実際、未来も黎明や蒼穹のそれについて、
<そういうもの>
としか思ってない。これは陽も同じ。だから気遣うことはあっても冷やかしたり囃し立てたりということがないんだ。その必要がないから。そんなことで盛り上がる必要がないから。
だからこそ黎明もただ真っ直ぐに未来と張り合えるというのもある。ルコアを独り占めしたい気持ちは確かにあってもそれを歪んだ形で発揮する必要がないんだ。
ルコアの妊娠により<黎明の恋物語>は思わぬ展開を見せ、
<未来との決着>
を望むのではなく、
「ほら、未来もちゃんと手伝って!」
「はいはい、分かってますよ」
と、ルコアのサポートを自分と共に行わせることに意識が向いてしまったようだ。もちろん、
「ルコアを一番好きなのは私だから! 未来には負けないから!」
とは口にしつつも、
『何よりルコアが無事に出産し子供を迎えられるのが大事』
と考えているようなんだ。そのためなら未来だって利用する。
ただただ<自分の気持ち>だけが大事で『愛してる』などと口にしながらも実際には相手の気持ちなんか自分に都合のいいようにしか解釈してない、
<身勝手な恋愛感情>
ではなく、ルコアを自分と同じ<一人の人間>として尊重しているからこそ、
『妊娠により精神的に少し不安定になっているルコアの前で未来といがみ合う』
みたいなことは避けてくれているんだよ。
<まだ満十歳九ヶ月ほどの子供>
とは思えない精神的な成熟度を見せてくれている。その上でやっぱりあどけない部分も確かにあって、
『地球人の子供とは違う』
というのを思い知らされるのは間違いなくある。ここで俺達大人が<地球人の子供についての常識>に囚われていたらきっと適切な対処ができないだろうな。
それをつくづく思い知らされるよ。
『ただの恋物語を見ているつもり』
ではいられないんだ。




