黎明編 私がついてる!
まさか初めての妊娠が自家受精とは……
ビアンカの場合はそれ以前に黎明を妊娠出産してるからなあ。と言っても<本来のアラニーズとしての妊娠出産>はケイン達ではある。あるが、それでもまったく初めてというわけでもないだけ事情が違うのか。
ただ、前例が確認できていないだけで、
<例の不定形生物由来のキメラ体の特性>
を考えればビアンカ以前にもそういうことがあった可能性は十分にある。と言うか<獣人達の始祖>の中にもビアンカと同じ事例があったと考える方がむしろ自然かもしれない。ビアンカは周囲のフォローがあったからこそ今も穏当に過ごせているが、
<ヒト蜘蛛の始祖になったのがビアンカのように地球人としての記憶とメンタルを持った者>
だったとすれば胸が痛くなる。ルコアも、
「こうなるかもしれないのは分かってましたから」
と笑顔を浮かべてくれたりしてるにしても、かなり強がっている部分も多いであろうことは容易に察せられる。
実は未来も、
「こうなった時にはルコアの子供を俺も育てようとは思ってたけど、実際にってなるとなんかこう胸のとこがもやもやするよな」
とは口にしていたそうだ。しかし、
「ルコア! 大丈夫! 私がついてる!」
黎明は逆に前のめりになっていたようだった。そもそもルコアと晴れてパートナーになれたとしても子供ができる可能性のなかった彼女の場合、ルコアに子供ができるとなればそれは<未来との子供>か<ルコア自身の自家受精による子供>かだったわけで、『先を越された』的な感覚があるであろう未来との子に比べれば、
『恋敵の子供じゃないだけマシ』
というのはあるのかもしれない。すると今度は未来の方も、
「もちろん俺だってついてる! 心配すんなルコア」
黎明に負けじとアピールしてきたとのこと。
とはいえルコア当人としては、
「本当に大丈夫なのかな……」
昨夜、ビアンカとモニカとテレジアだけがいる場では涙を滲ませながら不安も口にしていたそうだ。無理もないと俺でも思う。これについては、
「医療面では全面的にバックアップする。ビアンカの時に得たノウハウもある。サーペンティアンについては初めてではあるもののシミュレーションは繰り返してきたわけで」
と、俺の方も明言させてもらった。
そうだ。こういう事態になる可能性があるのはビアンカがケイン達を妊娠した時点で分かっていた。分かっているなら備えるのが当然だ。地球人社会だと<コスト>面でいろいろ制約があるにしても、ここじゃまだそれは考慮する必要がないからな。




