黎明編 悪意を伴うものじゃない
野生の生き物であればパートナーを手に入れるために力尽くでライバルを排除しようとすることもあるだろう。けれどそれはおそらく人間が見せるような<悪意>を伴うものじゃないはずなんだ。ただただ自身の遺伝子を残すべく次代に引き継ぐべくできる努力をしようとするだけにすぎないと思う。
対して人間(地球人)は、
『ムカつく邪魔者に対しては何をしてもいい』
的な感情論で自分達の世界のルールさえ蔑ろにしようとすることがある。しかも意図的に。<悪意>を持って。
それは結局のところ普段から、
『自分に都合の悪いルールには従わなくていい』
という発想に触れてきたからだろうなとも思う。対して黎明はそういう発想に触れてこなかった。<野生の本能>に従って、
<同じ相手をパートナーにしようとしているライバル>
に対しては力尽くで退けようとする発想自体は持っていても<人間>相手にそれを実行するにはしっかりと低くないハードルがあって、もし未来と衝突するにしてもそこに<悪辣さ>はないだろうな。
なにより、黎明も未来もお互いに一方的に傷付けられるだけの存在じゃないからたとえ衝突があったってどちらかが単なる加害者・被害者になるわけじゃない。そもそも人間関係においてどちらか一方が加害者や被害者になることなんて実はそんなに多くないそうだ。
もちろんたまたま悪辣な犯罪者に目を付けられただけならそれは一方的な被害者になるんだとしても、そういうのは猛獣に襲われるようなものであって<人間関係>とは言い難い気がする。そうじゃなくて、普段からそれなりに関りがある者同士での場合はよほどの力や立場の差がない限りは逆にそうはなりにくいはずなんだ。<身近な人間による虐待>などの事例を除けば。
これについては本当に分かりやすい<例>があるだろう?
『イジメはイジメられる側にも原因がある』
という話だ。これはあくまで加害者が自身の行為を矮小化するために、
『そういう流れにもっていこう』
として口にする卑劣な戯言だから耳を貸す価値もないとは思うものの、<原因>や<切っ掛け>自体は被害者側にあったりすることはないわけじゃないと俺も思う。なにしろ俺が子供の頃にも同級生に厄介なのがいて皆に嫌われていた。そして特にその同級生を嫌っている者達が結託して実力行使に出たりもしたんだ。
とはいえ暴力に訴えたのは拙くて、メイトギアが保存していた記録から不法行為が断定されてしまって刑事事件になったとのこと。




