黎明編 そんな展開を期待されても
<恋愛もののフィクション>においては、
『想いを寄せる相手を手に入れるためなら邪魔者の命を奪うことも厭わない』
なんてメンタルを持つキャラクターも結構な頻度で出てくるらしいのは俺も知ってるしそういうキャラクターが出てくる作品に触れたことは何度かある。だが俺にはまったくそのキャラクターの心情について共感できなかった。ただただ、
『気持ち悪かった』
だけだ。中にはそれこそ<想い人>そのものを殺して、
『永久に自分のものにする』
なんて考え方をするのもいたりしたが、俺にはそういうキャラクターのよさがまるで理解できない。もちろんただのフィクションの中のキャラクターだったら現実に誰かを傷付けるわけじゃないだろうからそういうキャラクターが登場することを理由に作品そのものを否定するつもりはない。ないが、その魅力みたいなものについて俺に理解を求められても困るだけなんだよ。
ただ、現実にもそういう考えの人間はいて、実際に事件を起こした例があるというのも聞いた。
正直、そういう人間については俺自身の感情としては、
『そんな奴、死んだ方がいいんじゃないか? どうせ治らないだろうし』
と思ってしまうのも偽らざる気持ちではある。なにしろ黎明はよっぽどのことがない限りそんな風にはならないのが分かってしまうし。それが分かるからこそ異常さが際立つんだよ。
黎明がもしルコアをめぐって未来と衝突して万が一取り返しのつかない事態になったとしてもそこまでショックは受けないだろうという印象もある。獣人達のメンタリティはそういうものだと思う。<後悔>はしても、
『心を病む』
ようなことはないだろうなというのが分かるんだ。しかもその<万が一>はあくまでも<事故>でしかないと思う。黎明に<悪意>はないだろうな。
『未来を殺してルコアを手に入れたい』
という発想やそういう発想に至る原因になるものが黎明の中にないんだよ。だから『想いを寄せる相手を手に入れるためなら邪魔者の命を奪うことも厭わない』なんて考えを持つことがない。単なる<希望的観測>じゃなく彼女をちゃんと見ていればそれが分かる。分かるからそういう面での心配はしていない。
これは同時に、
『想いを寄せる相手を手に入れるためなら邪魔者の命を奪うことも厭わないというキャラクターが出てくるフィクションのような展開にはならない』
という意味でもある。
『そんな展開を期待されてもその期待は空振りに終わるだけだ』
とはっきり言えるんだ。




