黎明編 因習を外圧によって覆す
『因習を外圧によって覆す』
これも地球人社会の歴史において無数に繰り返されてきたことだった。
<人間を人間として扱わない因習>
を何百年と続けてきたコミュニティの在り方に耐えきれなくなった者が<外の世界の力>を使って因習を違法化させたりコミュニティそのものを崩壊させたりというのも実際に何度もあったし、フィクションのプロットとしてもよく採用されていたな。
だから、
『人間は人間であるという現実を認めずに特定の人間の妄想をいつまでも維持し続けよう』
なんてのはそもそも無理があるんだというのがよく分かる。<奴隷解放>も結局はそういうものの一つだったんだろうし。
ただその一方で、
『人間は本来乱交型の生殖を行う動物だからそれを正しい在り方として認めろ』
というのも、
『人間を蔑ろにしてる』
わけで。
『自分のパートナーが自分以外にもパートナーを持っている』
のを無理なく受け入れられる者はそう多くないのも事実だと俺も思う。シモーヌが今でも<オリジナルのレックス>に対する気持ちを失っていない点については俺もいい気はしないわけで。
が、同時に、
『レックスへの気持ちを捨てきれない点も含めて今のシモーヌを愛してる』
のも事実なんだ。その矛盾した部分を持ちながら生きるのも人間という生き物だと思う。
だから単に黎明にルコアへの気持ちを諦めさせてルコアは未来と番わせるなんてことも考えてない。結論を出すべきなのは黎明とルコアと未来であって俺じゃない。ビアンカでも久利生でもない。『人間を人間として認める』というのはそういうことのはずなんだ。とはいえ問題が拗れて誰かに危害が加えられるとなれば話は別になる。そこは毅然とした態度で干渉させてもらう。<人間の社会>を成立させるために。
でも今のところ、その辺りは大丈夫そうだ。宴の後片付けの様子を見てても、
「黎明、こっちを頼む」
未来が食器の片付けを頼んできても、
「分かった」
と特にわだかまりも感じさせずに素直に応じてくれてたし。まあこれは未来自身が率先して片付けをしてるからというのもあるんだろうけどな。ここでもし未来が自分では何もせずに指図してくるだけならこうはなってないと思うんだよ。俺だってシモーヌが何もしないで指図してくるだけだったら気分悪いし。シモーヌは研究に没頭している時じゃなければちゃんと自分でも動いてくれる。おかげで『気持ちが冷める』ということもない。
相手を人間だと思えばその辺を気遣うのは当たり前だろう?




