黎明編 一番の障壁
黎明の恋物語における<一番の障壁>は、
<黎明自身の年齢>
だった。まあそれを問題と感じてしまうのはルコアの方の感覚が原因ではありつつ。
<獣人>としてみれば黎明ももうすでに立派な<成体>だ。見た目もそうだし肉体的な機能については地球人の二十代前半相当だろう。それこそ結婚し子供を産むにしてもまったく問題ない成熟度だ。
ただ実年齢は『満十歳になったばかり』だから地球人の感覚からすると<精神的な成熟度>の点ではまだまだ十分という印象を持てないこともまた事実。普段の様子を見てても、仕事なんかはちゃんとこなしてくれるもののあどけなさも残ってるんだ。ルコアのことで未来に噛み付いたりしてるのも<幼さ>を感じる点になってるのは正直なところか。
ああそうだ。ルコアの前で未来に噛み付くようなことをしているからなおさらルコアも困ってしまうんだろう。ルコア自身もまだまだ大人になり切れてない部分があるからなあ。自分の感覚とのズレを飲み込めないのはある。そういうのが絡み合って黎明の恋物語は先に進めない状態なのかも。つまりあくまで<当人の問題>ということ。
だから俺達としては『見守る方向で』という方針なんだ。黎明が感情を拗らせて無茶をするようなことでもない限り。
と言いつつ、万が一黎明が実力行使に出たところで未来が相手なら心配する必要も感じないが。フィジカル的な部分の強さ自体はほぼ互角と推測されてても、先に生まれた兄である未来の方が経験的な意味で一日の長がある。加えて未来は自分の手でルコアを守るために鍛えてもいる。牙斬の一件の際、自分の所為でルコアに大きな傷を負わせたことを今も悔やんでいるからこそ。
もちろん黎明もルコアを守るつもりではあるものの、その辺りの思い入れの強さの点では未来には敵わないだろうな。<切っ掛け>がない分。
もしかすると無意識のうちに黎明もそれを悟ってて余計に未来に嫉妬してしまっているというのもないわけじゃないのかもしれない。これについてはあくまでもただの推測だし、当の黎明自身が自覚してないだろうから、なんとも。
いずれにせよこれは黎明自身が成長しなければ噛み合わない部分のような気もする。ゆえに、
『時間が掛かる』
ということなんだ。ルコアのパートナーになって子供は生まないならその辺の時間的余裕は十分にあるだろう。医療用ナノマシンによるメンテナンスを受ければ、老化抑制処置ほどじゃないにしても子供を生む場合でもそこそこ時間の余裕も作れるし。




