黎明編 身を守る手段
だが、地球人の多くは、ただ、
『粗野に見える』
『乱暴そうに見える』
『攻撃的に見える』
というだけで当人が実際に誰かを意図して傷付けようとしてるかどうかなど関係なく色眼鏡で見てくるという悪癖を持ってたりもする。それがあるからこそ他人からそう見えないように自身の見た目を気を付けるのはもちろん大事だしそれ自体が、
<身を守る手段>
になるのも事実ではある。明らかに<イキった見た目>をした奴が、例えば派手なタトゥーを体に刻みピアスをバシバシに開けた奴が、
『見た目で判断するな!』
と被害者面をしても共感してくれる人間(地球人)は少ないだろう。俺だって口に出してとやかくは言わないにしても、
『その見た目で言われてもなあ』
とは思ってしまうのも間違いない。そこは否定しない、だからこそある程度については、
『無難で清潔感のある見た目を心掛ける』
のも平穏でいるためには必要だと俺も思う。<個性>を出そうと奇抜な恰好をするのは本人の自由だとしても果たしてそれで得られるのは<精神の自由>なんだろうかとは昔から疑問だった。
その点、光も灯も、基本的には美人(親の欲目込みで)でありつつ風体は凡庸だと思う。
<動きやすく汚れや破損を気にせずに済む恰好>
は今のここではむしろ<普遍的>とも言えるから、俺も基本的にそういう恰好をしてるから、割と普通なんだよ。別に突拍子もない恰好でもないし女性がしてておかしなそれでもない。シモーヌもシオもビアンカもそんな感じだし。
そういえば地球人社会のコンテンツ内では、
<いかにもフェミニンな恰好で外出する女性>
が当たり前のように描かれていたものの、現実においてはそういう女性はむしろ少数派だったんだとか。思い出してみたら俺も<いかにも女性らしい恰好>の私服を着た女性を現実で見掛けることは少なかった記憶しかないな。
「そうだね。女性も普段は大半がラフな格好だったと思う。だからこそ女性型のメイトギアはフェミニンな装いを連想させるデザインのものが多かったわけで」
とは、サディマの弁。
彼もAIエンジニアとして<らしい所作>を再現することを心掛けていたそうだ。それに反発する人間もいたそうだが、あくまで<商品>としては<らしさ>を求められていたとのこと。その上で、
『オーナーの好みに合わせることができるようにも設計されてる』
ということか。
実際、性別を意識させないようなカスタマイズが施されているメイトギアは少なくなかったし。




