黎明編 正直なところ少し不満だったり
精々が人間の腹の高さくらいまでの草ばかりで木の類はまばらにしか生えていない草原でアラニーズの巨体は<捕食者>としては非常に不利だろうな。隠れることが難しく有効射程内まで近付くのもままならないだろうから。ゆえにキャサリンもじっと身を潜めて獲物の方が気付かずに近付いてくる場合を除けば基本的に自分が追い立ててドウに仕留めてもらう形が多かった。
なのでイザベラやビアンカを伴った黎明達の狩りも基本的にはその方式が使われる。特に黎明達の場合は<普通の人間としての暮らし>をしてるのもあって他にもすることがいろいろあるし、キャサリンほどは時間を贅沢に使えないしな。
そんなわけでイザベラとビアンカがわざと姿を晒して突撃、獲物を追い立てて黎明と未来が仕留めるという手筈になっていた。
「GO!」
ビアンカが掛け声をかけるとイザベラも弾かれるように立ち上がって、
「おおおおおおおっっっ!!」
雄叫びを上げながら走った。
「ビッッ!?」
これには当然ガゼル竜の群れも反応、一目散に逃げ始める。が、
「!!」
群れのほとんどがイザベラとビアンカから逃れるように走り出したのにも拘わらず、その中の一頭が逆にイザベラとビアンカの方に向かって猛然と走ってきた。
たまにいるんだ。ガゼル竜もインパラ竜も典型的な<草食獣>ではありつつ同時に<鵺竜の一種>でもあるからか、本質的には攻撃的で獰猛な一面もあり、実は土竜やイタチ竜を襲って食うこともある、
<極めて草食に近い雑食>
であることが今では分かってる。これはあれだな、
『地球のパンダは、基本的には笹を主食としているが実は本来クマの一種であり稀に小動物を襲って食べることもある』
ようなものかもしれない。そしてガゼル竜やインパラ竜の中にはとんでもなく凶暴な性質を持って生まれてくる個体もいて、捕食者を逆に襲って食い殺すのもたまにいたりするんだ。たぶん今回のもそうなんだろう。普段は草ばかり食べているがレオンやオオカミ竜が襲ってきた時なんかにはそいつにとっては逆に、
『御馳走が向こうからやってきた』
みたいな感じなんだろうか。群れで襲ってくるレオンやオオカミ竜をものともしないくらいイカレてるから、はるかに大きな体を持つアラニーズ二人を前にしても怯まないと。
だがそれは、イザベラにとっても願ってもないことだった。いつもは逃げ遅れた個体を仕留められることもあるだけで、当然ながら黎明と未来が仕留める場合が多いから正直なところ少し不満だったりもしたんだ。




