黎明編 腕利きのハンター
そんなこんなでとにかく黎明達はガゼル竜の群れに近付いていく。そうしていよいよ実際に視覚で確認できるかできないかくらいの距離になると、群れ全体に気付かれて逃げられてしまう可能性が高くなるので、ビアンカとイザベラはその場に伏せてじりじりと近付き、黎明と未来は、
「いつもの手筈で。無理はしないように」
ビアンカの指示を受け、
「もちろん」
「任せとけ」
小声で応えつつ親指を上げてみせた。そうだ。これまでにも何度も何度も繰り返して高い確率で成功させてきたものだ。何をどうすればいいのかはよく分かってる。ある意味では、
<小学生のアスリート>
のようなものだ。自分が何をすればいいのか何をするべきなのか、何度も繰り返してちゃんと身に付いてる。アスリートの中にも小学生の頃から本格的な競技人生を送ってきていて大人でもなかなかできないような振る舞いを確立させてたりするのと同じかもしれない。
なにしろ本当の野生と比べればリスクを軽減してもらえてても<普通の生活をしてる人間の子供>よりは圧倒的にシビアな状況にいるんだ。その辺は一線級のアスリートにも通じる部分だと思う。
だから身を屈めて草に隠れつつするすると滑るように群れに近付いていく姿も堂に入ったものだった。二人のことをよく知らなければそれこそ普通に成人した<腕利きのハンター>にしか思えないだろうな。なお、そんな黎明と未来についていくホビットMk-Ⅱも実に滑らかな動きで気配を感じさせなかった。初期の頃のドタバタした印象のある動きからすれば隔世の感さえある。
そうしていつものように二人と一機が配置につくのをイザベラも静かに待つ。普段はあまり落ち着きがないようにも見えるイザベラではあるものの狩りの時は別人のようにしっかりした印象になる。<ハンターとしての本能>がそうさせるのかもしれない。全裸のままで草むらに潜んでいる姿もこれまた堂に入ったものだ。そこにエロスなど微塵もない。まあそれでもなお今のイザベラの姿にエロスを感じる地球人もいるのかもしれないが、そんなものは彼女達の<生きる糧>にはなってくれない。何の価値もないどころか邪魔になる可能性さえあるだろう。そういう点でも人間(地球人)が作り出した価値観の中には無駄にしか思えないものもある気がしてしまうな。
そうして待つこと一時間。
「配置完了。いつでもどうぞ」
自動音声がビアンカが装備したヘッドセットに届いてくる。黎明と未来が使っているヘッドセットに声を出さずに連絡できるように備えられた機能だ。




