黎明編 効率は完全に慮外になってる
<力のアウトソーシング>によって人間は、
『個々が持つ本来の力以上の力を行使することができる』
ようになった。人間が、
『ただ自分の気持ちに従ってやりたいことをすればいい』
というのが許されなくなった一番の原因がそれだと思う。野生の生き物がどんなに自分の気持ちだけに従って横暴に振る舞おうとできることには本当に限界がある。野生のクマやオオカミやトラが街中で大暴れしたって早々に<退治>されてしまうだろうが、人間の場合はそこに加えて<権力>などを併せればそれなりの規模を持つコミュニティそのものを蹂躙することすらできてしまう。世界規模で戦争を起こすこともできてしまう。そんな生き物は他にはいない。
だから人間はわきまえないといけないんだよ。<人間ならではの価値観>で自身を律しなきゃいけないんだ。もう人間は目先の感情や自分の気持ちにだけ従ってちゃいけない存在になってるんだ。
対してキャサリンは、<人間>ではあるものの<力のアウトソーシング>を実践しないから、関わり方さえ間違えなければ<大きな脅威>にはなり得ない。どれほど強くてもハートマンやグレイの前では赤ん坊と大差ない<か弱い存在>になってしまう。まあそれ以前にドウがそれをさせないが。
これは按と伍号機も同じ。さりとて按はキャサリンよりもずっと気性が穏やかだからもう一つ危険性は低いか。あと、余談ではあるがキャサリンにとってのドウのように伍号機に<名前>が付けられてないのは按自身が『人間の言葉を話さないがゆえにその必要がない』からなんだ。キャサリンはほとんど他人と口をきくこともないものの一応は喋れるんだよ。ドウの名前もキャサリンがそう口にしたからつけたものだし。
と、ますます話が逸れていくから一旦戻すが、イザベラが見付けたガゼル竜の群れに黎明達は慎重に近付いていく。するとガゼル竜の一頭が彼女達の方に頭を向けて警戒している様子を見せた。途端に他のガゼル竜もそれに倣って頭を上げる。が、まだ大半は、
『仲間が警戒してるからつられた』
だけで実際に黎明達の存在を察知できたわけじゃないだろう。それに黎明達としてもこの距離ではどうにもできない。もちろんビアンカやホビットMk-Ⅱらが携帯しているライフルを用いれば狙撃は十分できるものの、それどころか今ある装備だけで群れを根こそぎ狩りとってしまうこともできるものの、そうじゃないんだ。そんなのは目的じゃない。
これは<一種のレクリエーション>であって効率は完全に慮外になってるし。




