黎明編 当たり前の感覚
黎明も未来も、それぞれ<獣人としての粗暴さ>は間違いなく備えてる。それこそその気になれば<殺人>だって躊躇わないだろう。
『自分や仲間の命を守るために敵を殺す』
のは獣人達にとっては、
<当たり前の感覚>
だ。だから狩りで獲物の命を奪うのも、
<自分達が生きていくために必要なこと>
という感覚が誰に教わることなく備わっている。しかも相手が同族であっても仲間でなければ容赦はしない。マンティアンやヒト蜘蛛のような単独行動が基本となる種だけでなく、パパニアンやレオンのように群れを作る種であってもだ。
実際、猛獣であるレオンはもとよりパパニアンでさえ縄張り争いなどで他の群れと衝突すると命を落とす者も出たりするし、基本的にはそれが咎められたりもしない。身内や仲間を殺された側は怒りもするものの関係ない者はそれこそただ無関心だったりもする。人間(地球人)のようにまったく無関係な赤の他人が罵詈雑言を浴びせたりすることもあるのとはまるで違う。
それでもいつでもどこでもどんな時も牙を剥くわけじゃないから、そこをちゃんとわきまえるようにしたいと思ってる。
先にも触れたようにこの<狩り>は黎明達が秘めている<激しさ>のガス抜きでもあるんだ。
で、イザベラを先頭に進む。アラニーズ本来のそれと思しき気性を秘めたイザベラは狩りの時にはそれこそ活き活きしている。その気になればインパラ竜の群れくらいは素手で壊滅させることもできるかもしれない。そんな彼女に無制限に武器を使わせればどんなことになるか、想像するのも恐ろしい。
もっとも、イザベラ自身は武器はあまり好まない。
「面白くなーい」
その一言で切り捨てる。まあただでさえ強い彼女が武器なんか使ったらそれこそゲームのイージーモードのようになってしまうのかもしれない。<発散>するにはある程度の手応えが必要なんだろうな。
そうして三十分ほど歩いたところで、
「いる……」
戦闘を歩いていたイザベラが鋭い表情を見せた。続けて、
「いるね」
ビアンカもそう口にした。実はその辺りの感覚はイザベラやキャサリンの方が鋭いそうだ。ビアンカは<地球人としての感覚>が邪魔をするのか若干劣るとのこと。おそらく<地球人としての五感>をまず優先してしまうんだろうというのがレックスの見解だった。
対して元々アラニーズとして生まれたイザベラやキャサリンは<アラニーズとしての感覚>が生まれつき備わっていることで本体の毛が捉える情報をそのまま受け取れるんだろうな。




