黎明編 認識を作らないように気を付けてる
とはいえ地球人そっくりな部分に生えている<毛>については本体部分のそれと同じ機能は備わっていないから濡れようが服を着ようが能力にはさほど影響しないのはビアンカの証言からも判明している。しているが、
『なんとなく嫌』
という感覚そのものを頭ごなしに否定するのは好ましくないと確認されているそうだ。
『平気』になっているならほとんど問題もないものの『なんとなく嫌』という小さなストレスも積み重なると精神を蝕む大きなリスクになるわけで。
だから服を着ることを強制はしていない。未来や黎明や蒼穹は服を着ているものの無理に矯正したわけじゃなくて徐々に慣れていってもらった上でのことなんだ。この辺りをスムーズに成立させるために、
『性は猥褻なものである』
という認識を作らないように気を付けてる。その点でもコーネリアス号のメンバーは優秀だった。まあ、男女が限られた空間内で何年も生活を共にするわけだから性に対して過剰な反応を見せるタイプの人間がいるといろいろ問題が生じることは、初期の有人宇宙探査の事例でも確認されたことだそうなんだ。本格的な宇宙探査が行われるようになった頃には基本的にメイトギアが人間の代わりをしたのもその辺りが理由の一つだったとか。
どんなに普段は理性的に振る舞っているように見えた人材であっても長く閉鎖的な空間に閉じ込められていては精神のバランスを保つのが難しくなって<事故>が多発したと記録にはある。
宇宙開発黎明期だとそもそも<宇宙ステーション>などであってもあまりにも地上とかけ離れた<特殊な環境>だったことで、
『自分達は非常に特別なミッションを遂行している』
という認識が常に優位に立つがゆえにある程度の緊張状態が維持されてたが、技術の発達により人工環境も高度に整備されて、
<緊張する必要のない日常>
も確保されるようになったことで<自覚>が薄れてしまい、それでいて<閉鎖的な空間>である事実は変えようがなく、結果、皮肉にも逆に精神のバランスを保つのが難しくなったのだとされている。緊張が解けた弾みで普段抑えていた欲求が暴走してしまうとでも言うか。
で、<不同意性交>などに至り、しかもその行いに対しての過剰な<処罰感情>も肥大化。ついには殺人未遂事件にまで至ってしまったと。
<取り返しのつかない事態>についてはロボットが止めてくれても一度拗れた感情は収まりが付かず、<任務>が破綻して当然ながら強制終了になるからなあ。




