黎明編 どうにも噛み合っていないだけ
『私もうこんな一人前な体なんだよ! 私のも見て喜んでよ!』
などと口走りながらルコアに迫る黎明に、
「ふ、お前のじゃ駄目ってこった。諦めな」
未来は自身の腰の両手を当てて胸を張るように<肉食獣の体>を見せ付けてきた。クロコディアは生粋の肉食獣であり未来もその形質をしっかりと受け継いでいるからか攻撃力に特化した筋肉の付き方をしてると言えるのか。正直、男の目で見ても『羨ましい』し『憧れる』よ。
『強さが視覚化されてる』
とでも表現すべきか?
が、地球人からすると、
『若い男性と女性が己の肉体美をそれこそ裸で競い合ってる』
って状況だからさすがに見るのは憚られるわけで音声のみに切り替えた。それでも光景は容易に想像できる。ドヤ顔の未来とムキになってる黎明と困った様子のルコアと呆れ顔の蒼穹という光景が。そこに、
「未来、腹減った!」
バアン! とドアを勢いよく開けながらイザベラが入ってきた気配が。しかも、
「未来! 今すぐ私と番おう!」
どうやら彼が上半身裸なのを見て準備OKだとでも思ったかそんなことも口走っている。いやはやカオスな状況だよ。それと比べれば、こっちで錬慈と萌花が水帆の池で水遊びをしてるのなんて実のほのぼのとしたものだ。
萌花は満十歳。水帆は満七歳。どちらももう成人と言ってもいい体をしながらも今は全裸で、まだまだ子供の姿をしている満八歳の錬慈(こちらも全裸)と楽し気に遊んでいるという光景であっても、なんとも微笑ましいだけなんだよな。誰も<性>をまったく意識してないからだろう。地球人社会であれば<八歳の男児>といえどそろそろ性を意識し始めたりするかもしれないが錬慈の場合は普段から見慣れすぎているというのもあってかまるで意識してる様子もない。萌花のもそうだし、水帆に至っては常に全裸だから彼にとっては<当たり前の姿>でしかないんだ。意識するとしても第二次性徴を迎えた頃になるかもしれないな。
というのは余談にしても、黎明のアピールは少々空回りしてると感じるのは事実ではある。
さりとてルコアも決して黎明のことを何とも思ってないわけじゃない。自分を<パートナーになりたい相手>として好意を向けてくれていることには悪からず思っているそうだし。
ただ、感覚がどうにも噛み合っていないだけだ。
どんなに肉体的には十分に成熟していてもそういうのがピンと来てない黎明を成人と見做すのは正直なところまだまだ無理があるとしか思えないんだよなあ。




