黎明編 一筋縄ではいかない
<ノウハウの言語化>
これは<人間を人間たらしめている要素>の中でもかなり大きいものの一つだと思う。それによって人間は自身の経験によって得られたノウハウだけでなく自分以外の誰かが得たノウハウをも<知識>という形で得、それを自身の経験に積み重ねていくこともできるようになったわけで。
このことは本当に大きい。野生の生き物もある程度はノウハウを次の世代に伝えていく事例もあるのは確認されているものの、<言語化されたノウハウ>はそれこそ、
<本来は決して出会うことのなかった者>
<知り合うことすらなかった者>
にさえそれを伝えることができるようになる。何千キロと離れたところで生まれた赤の他人に、しかも世代を超えてノウハウを受け継いでいくなんてのは人間にしかできないことだよな。
とはいえ、
『言語化されたノウハウを自身の経験値に取り入れることができるかどうか』
についてはいつでもどこでも誰でも必ずできることじゃない。
<非凡な才能に基づいたノウハウ>
なんてのは知識として獲得できても実践は難しいだろう。
<トップアスリートが持つノウハウ>
を学べたからといって誰もがトップアスリートと同じことができるようになるわけじゃない。
そこまでじゃなくても、
『他の誰かが経験によって得たものを学んだからといって必ずしもそれを完全に活かせるとは限らない』
からなあ。それでも、ルコアは未来や黎明に想いを寄せられていることについて、ビアンカや久利生に相談もしているそうだ。
特に久利生は実際に來やビアンカや灯から想いを寄せられて受け止めた経験があるわけで。
そして久利生は丁寧に答えてもくれたとのこと。それでもなおどうすればいいのかルコア自身は答を出せずにいる。無理もないよな。俺だって同じ状況に陥れば今でも戸惑うと思う。ましてやそのうちの一人は同性だ。同性から想いを寄せられて受け入れられるかと言われれば難しい気もする。
それでも俺は同性愛自体を否定するべきだとまでは思ってない。あくまでも俺には難しそうだと感じているだけで。これは、
『好きになれそうにない相手からの想いをどう捉えるか?』
というだけの話だと思うし。
ただルコアの場合は黎明のことはちゃんと好きなんだよな。家族や親族として。だからこそ戸惑いもある。
『妹のように思っていた相手を恋愛対象として見られるか?』
という形の。
いやはや本当に人間関係というのは一筋縄ではいかないとつくづく思い知らされるよ。




