虚飾の鳥籠
(なんで、あんな男について来ちゃったんだろう…)
二人で住むには広すぎるマンションの部屋、ダイニングテーブルに突っ伏した梨沙は思った。
あの時の篤は頼りがいのあるカッコいい男だった。困ってる私を助けてくれて新しいステキな世界を見せてくれた。この人となら幸せになれるかも、と。
貴久くんは仕事が大変だから私は居ないほうがいい。自分の家族のことで貴久を心配させてはいけない。そう言い聞かせてアパートを解約してこの部屋に来た。
だが、篤は自分でお金を稼いだこともないボンボンだった。
周りには経営者だと言っているが親の仕事を手伝っているだけ。今住んでる部屋も親の持ち物。
誰にでも横柄な態度で接し、周りにいるのは金目当ての人間だけ。お金で苦労する母親を見て育ってきた梨沙は、軽々しく大金を使う篤に怒りさえ覚えた。
でも篤、いや篤のお金と離れられない。故郷の家族のことを思うと申し訳なくて胸が痛い。
「どうしたらいいの…」
涙が出そうになったその時、スマホが鳴った。知らない電話番号だ。
「…はい。」
「あの、北條と申しますが。」
(貴久くん!)
悲しみの涙はその声で嬉し涙に変わった。
「ありがとう。電話くれて。」
「何があったか聞かせてもらえる?」
素っ気ない貴久の言葉に梨沙は黙り込んだ。やっぱり勝手にいなくなったことを怒ってるんだ。仕方ない、そう思われて当然のことを私はやってしまったんだ。
「…お願いだから一度会ってほしい。許してもらえるとは思ってないけど、貴久くんに謝りたいの…」
少しの沈黙の後、ため息が聞こえた。
「来場の土曜の午後なら空いてる。時間と場所は合わせるよ。」
「ありがとう…貴久くん。」
梨沙はもっと話したい気持ちを抑えて電話を切った。




