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思い出のかけら
貴久は部屋に戻ると香奈から受け取った梨沙の封筒を開いた。
“お久しぶりです、貴久くん。元気そうで安心しました。私と篤が一緒にいて、ビックリしたと思います。そのことについて話したいと思っています。時間のある時に連絡をくれませんか?お願いします。 梨沙”
最後に携帯の電話番号が書いてある。
読み終えた貴久は便箋を封筒に戻してカラーボックスの上に伏せてあった写真立てを手に取った。
(梨沙…)
梨沙が消えた後、写真や梨沙に関わるものを全て処分したが、壁とカラーボックスの隙間に落ちていた写真は一つだけ残った梨沙との思い出だ。
学生時代に二人でバイト代を貯めて信州へ行った時の写真。諏訪湖の畔で無邪気に笑う梨沙とそれを見守る貴久。贅沢しなくても二人で居れば楽しさを分かち合えたあの頃。
時間が経ち、梨沙は貴久とは正反対の篤と一緒に現れた。どこで二人はつながったのか。そして、梨沙はなぜ突然貴久の前から消えたのか。知りたいことは幾つもある。
貴久は一旦手に取ったスマホをテーブルに戻した。まだ気持ちの整理がついていない。
もう少し落ち着いてからの方がいい。そう思った貴久は封筒をマグネットで冷蔵庫のドアに貼り付けた。




