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戻らない時間
店を出た貴久は電車に揺られながら梨沙のことを思った。
(何で篤なんかと…)
梨沙と知り合ったのは大学生の頃、山形から横浜の美容の専門学校に進学していた梨沙が貴久のバイト先に入ってきた。
母子家庭で弟もいるからと流行りの服も買わず、空いた時間には他のバイトを詰め込んでいた。
そんな家族思いで直向きな梨沙に惹かれた貴久から交際を申し込んだ。誕生日にプレゼントした可愛いTシャツも「もったいなくて着られない。」と言った梨沙。
二人は貴久が大学を卒業し就職してからも付き合っていたものの、貴久に名古屋の本社への半年の出張の辞令が出た。
「半年でしょ、すぐだよ。」
新横浜駅の新幹線ホームで別れた二人。
しかし出向を終えて梨沙のアパートに行った貴久が見たのはもぬけの殻になった部屋だった。
電話もLINEもつながらない、出会ったバイト先も辞めていた。貴久は呆然と立ち尽くすしかなかった。
そして2年ぶりに会った梨沙は篤の横で怯えたように貴久を見ていた。
(何があったんだよ梨沙…なんで篤みたいな奴と)
貴久はあの頃と変わらない横浜の街灯りに目をやってため息をついた。




