視線
「……何かの視線を感じたかもしれません」
『視線? 犯人が近くにいた……はずはないぞ。人間では、この暗闇の中で見るのは難しい。ロボットだとして……二人が隠れるような場所もないぞ』
研究室から部屋までの間に、人が隠れられるような場所はない。暗闇という事で、寝転がる事が見えなくするにしても限界はある。
そして、この暗闇の中だとロボットを同行されているはずであり、流石に居場所がバレてしまうだろう。
『しかも、意識を失った状態だったはずだ。誰かに操られていて、そう感じ取れたというのは……流石に無理があるか』
意識を何者かに奪われ、アダムが自身を遠目で見ているというのは、監視カメラを乗っ取らないと無理な話だろう。
『……ちょっと待て。それは今の状態での話か?』
アダムは事件当日の事だとは言っていない。
「今です。……アインズ様も気をつけてください」
「分かっている。見落としがないようにするぞ」
アダムは周囲を見回した。そうすれば、アインズも同様に警戒する事が出来る。二人同時で見る事により、見落としが無くなる。
とはいえ、先程博士達から返信が来たばかりであり、ここまで移動するのは不可能……ではない。
『……博士達から返事はあった。だとしても、パートナーが側にいるとは限らないか』
博士が外に出る際、パートナーは共に行動する。だが、博士が研究室にいた場合は?
研究室は博士もしくはパートナーでしか開かない。無理に開けるにしても時間が必要。
つまり、パートナーがいなくても、ある程度の安全は確保されている。
アダムが研究室にいる間、向かわせる事は可能なわけだが……
『アダムを襲撃するとしたら、アーメンのパートナー……02の可能性が高い気はするが』
パートナーのロボットの中で02は一番の巨体。姿を隠す事は出来ず、監視カメラにも移動する姿が分かってしまう。06も同様と考えていいだろう。
『05……カイトもないだろう。レオはメンテにかけるはずだ。カイトだとしても、君を攻擊する事はない。そういえば……攻擊される事はないのか』
パートナーのロボット達に攻擊される事はなかったと、アダム自身が言っていた。むしろ、彼の方が攻擊し、相手は無防備だった。
わざわざ壊されに来る事はないはずだ。博士が生存しているのなら尚更だ。
「そうですね。周囲に……熱源、彼等はいません。博士達も同じです。ワタシの気の所為だったのでしょうか?」
『……気配ではなく、視線というのがな。どちらにしても人間らしいわけだが』
周囲にそれらしき人物、物が見当たらない。気の所為というのが人間らしさがある。




