マスター
「カイトはワタシも同じだと答えました。機能停止……でなく、破壊されたという事でしょうか。最後の記録には破壊の承認された事が残されています」
先程のカイトの声は届いておらず、ロボット自身の死……破壊された記録を呼び起こしている。
「状態確認時、ボディに変化はなし。データも残存。ロック状態も解除されていません。廃棄は中止になった……という記録もなし」
「死ぬ前までの記憶は僕もありました。それと同じです。貴方が一番良かった時の姿のはずですよ」
ロボットの言葉からして、データさえあれば、体を変化させる事は可能のようだ。そこは人間と違うのだろう。
それを考えると、データというのが人間の性格、魂に該当するのだろうか。
「一番の良かった時の姿? 記録の確認をします。マスターと御一緒の時でしょうか? 多数の記録が残されています。カイトにもマスターがいると報告を受けました」
「……そうですね」
カイトはその返答に間を開けた。今の主は死神のアインズに違いないが、本来の主は別にいたからだ。
「貴方にもマスターが? そのマスターは……」
ロボットにも主がいた事にカイトは共感したようだ。そして、ロボットのマスターがどうなったのかが予想出来、その先を言えなくなった。
「ワタシのマスターはエヴァ博士。ワタシを産み出した人間です。そのマスターは殺されました。カイトが死んでいるというのなら、マスターもこの場所にいるのでしょうか?」
ロボットは人間により造り出された存在のようだ。常に存在する者ではなさそうだ。
ロボット……彼が死の情報を得たのも、マスターが亡くなった事によるものだと判断出来る。
そして、彼の未練……謎に関する事もマスターに関連している事も。
「……殺されたのですか? 犯人が誰かは……」
ロボットのマスターは何者かによって殺されたらしい。彼はそう認識している。
「不明。ロックされている情報にあるのかもしれません。解除コードも不明」
マスター殺害の犯人は見つかっていない。未解決の事件で終わっている。
「カイト。ワタシがした質問の返答を求めます。私はここでマスターに会えるのでしょうか」
「それは……無理です。ここに来れるのは条件があって……」
カイトもマスターと会いたいという気持ちは痛い程分かる。彼もその立場を経験したからだ。
「……そうですか」
ロボットの顔に表情の変化はない。変化自体が無理なのだろう。声のトーンもそれは同じなのだが、『……そうですか』の間があった事により、何かしらの感情があるのか。
だからこそ、カイトはこう言いしかなかった。
「ただ!! 主によって、貴方がマスターにもう一度会う方法があるかもしれません」




