記録なし
「……記録にありません。気付けば、マスターの前に立っていました」
「気付けば……ね。下手すれば、丸一日の記録がない事になるわけだ」
『君が無意識にエヴァの部屋に移動するのはありえるのか?』
「それは一度もありません……が、気付けば研究室に運ばれる事はありました。それはマスターの指示があったと推測されます」
『なるほど……君の体にエラーが発生した時、研究室に運ばれた感じか。いや……意識なく体が動く事もありえるのかもしれないな』
アダムの記録にない状態で、研究室に移動した事がある。彼女がアダムを運べる程の力があるとは思えない。
『もしくは……エヴァの研究室には君以外のロボットがいたりするのか?』
エヴァがアダム以外のロボットを作成していたのなら、それが彼を運んだ可能性もある。
「いません。マスターのロボットはワタシ一人です。他の博士達は分かりませんが」
エヴァのロボットはアダム一人。彼を運ぶロボットはなし。アーメンとドナテルロとの会話の中で、島内の移動手段として、車がない事が分かっている。
つまり、ロボットを運ぶための方法がないとも取れてしまう。
『なら、エヴァの命令次第で、君の意識なしで動くと考えるべきだな。その命令を何時受けたかも重要になりそうだ』
「エヴァは朝の集会以降、メンテナンス中の01にそう設定した事もありえるが、共に移動した可能性も。04は遠隔操作は出来ないが、エヴァの頭脳があれば」
モリーは自身の頭を整理するためなのか、独り言を口にしている。ここにはアダムや04しかおらず、他の博士達はいない。余計な情報を聞く相手がいないと分かっているからこそか。それとも彼女の癖なのかもしれない。
「01……君はエヴァの研究室に入れるはずよね。後から彼女の研究室を調べる事になると思う。勿論、今すぐにじゃない。監視カメラで見られているからね。全員が彼女の研究室に入りたいはずよ。だから」
『エヴァの死亡原因。理由等を調べる体もあるだろう。研究を盗む……引き継ごうとする博士もいるかもしれない。君はそれを許したのか?』
「いえ……拒否しました。ですが、強制的に開けられました。そのせいで、研究室の半分の機能が停止したた記録があります」
研究室に無断で侵入すれば、そういう機能を施しているのは当然だろう。下手すれば、全部停止してもおかしくないはずだ。
『なるほど……エヴァが君に遺したとされる物も、機能停止によって、見つからなくなった可能性もあるのか。勿論、それだけじゃないだろうな』
モリー達が無理に侵入しようとしたため、彼女の死の真相さえも消えた可能性もある。




