拒否権なし
「その通りです。ワタシがモリー博士と行動する事になります。マスターを運ぶのはワタシの役目でもありますから」
『そうなるか。ここでアダムが拒否する事は無理そうだな』
「問題ありません。ワタシの目的はマスターの遺物入手に変更されています。映像確認が必要であれば、優先させる事は可能です」
本来、アダムがモリーの研究室へ遺体を運んでいる。それはエヴァ博士の死を認識しておらず、彼女の体を優先させたからだ。
だが、彼にはすでに感情があり、自身で優先する物を決められる。モリーの意見を拒否する事が出来るわけだが……
『……君はモリーの研究室での記録は残されているのか?』
「研究室内の映像あり。マスターの体の確認のみ。変化はなし」
アダムの記録にあるのは研究室の映像とエヴァの遺体のみ。その遺体をモリー、04が何かを仕組んだ事もなし。
『モリーとの会話はどうだ? 何も話さなかったのか?』
彼女は監視役にアダムを選んだ。最適なのが彼だったわけだが、一度も会話はなかったのか。
嘘を要求されなくとも、エヴァの情報を引き出そうとする事は可能だ。アダムが拒否したとしても、その記録はないのか。
アダムが感情を得たタイミングは何時なのか。モリーとの会話が引き金になっている可能性もある。
「それが良い。01はモリーの肩を持つわけがないからな。エヴァに何かをすれば、コイツが俺達に教えてくれるはずだ」
「ふん……そうよね。私は01が行くので構わないわよ。他が行くよりも確実だし」
「今日の中央塔の担当するのは俺だ。行かないわけにもいかないだろ? 01に任せてもいいだろ」
「モリーさんが01で良いのなら……それに皆さんも賛成しているようですし、僕はそれを尊重するだけです」
『博士達全員がアダムを指名している。これを断るのは無理な話か。拒否権があるわけがないか』
全員が研究を見られたくない以上、アダムを選ぶ選択肢しかない。これを今更変更するのは不可能だろう。
「……分かりました。ワタシがマスターをモリー博士の研究室まで運びます」
中央塔の映像を確認する事は出来ないのか。アダム単独で中央塔へ入れるのなら、何処かで調べに行く事も可能になるだろうが……
それ以外の方法をアインズを持ち得ている。それは博士達の記憶を辿るわけではない。
全員の記憶を見て、満場一致であれば、それは確実……とは限らない。
それはここが擬似的世界だからだ。モリーが連れて行くのがアダムと本来と同じ行動だとしても、アーメン側に変化が起きる可能性は十分あり得る。




