25、夢と現実
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『あ!お兄様っ!このお花で花冠を作ってください!』
『むっ花冠か……作ってはみるが……あまり期待はするなよ』
そう言って眉間に皺を寄せ難しそうな顔をしたお兄様は、真剣な表情で花冠を作り出した。
懐かしい──
昔よく遊んでいた王宮にある色とりどりの花畑。
幼いころ、お兄様とサイラス様とよくここで過ごした。
お兄様は手先が不器用なのか、花冠を作るのは苦手だった。
それでも私がお願いすると、しょうがないな、といつも頑張って作ってくれていた。
不思議なことに、普段は何でもそつなくこなすお兄様は、花冠を作ることだけは上手くなかったし上達しなかった。
そんなお兄様が四苦八苦しているところを見ていることが好きだった。
私はその花冠が不格好でも、ボロボロでも、お兄様が苦手なのに頑張って作ってくれることが嬉しくて。
何度も何度もねだって作ってもらった。
『ジークは本当に上達しないな。ほら、これをどうぞ、お姫様』
『ありがとう!サイラス様!でも私、お兄様の作ってくれる花冠、大好きなの!』
『まあ、エリーにはどんなものでも似合うからね』
そう言いながら優しい顔で私に笑いかけてくれるサイラス様。
サイラス様はいつもお兄様の手元を何でそんなことになるのか、とでも言いたげに不思議そうに見つつも、一緒になって作ってくれていた。
だんだん成長するにつれてサイラス様はそっけなくなっていってしまったが、まだそんな様子はないころか。
私はいつもその2つの花冠を部屋に飾っていた。
寝る前にそれを眺めながら楽しかったことを思い出しながら眠る。
ああ、これは、幸せだったころの──
ベッドに入って寝た、そのタイミングで視界ががらりと変わった。
薄暗くてじめじめとしているここは──
『エリザベス、お前には失望した』
『お兄……様……?』
数年ぶりに会ったお兄様。ずっとずっと会いたかったのに。
今まで見たことないほどの冷たい目を私に向けているその人と、記憶にいる人とが違いすぎて。
また場面は少し変わり、噴水広場。
今にも雨が降り出しそうなほど、昼間なのに薄暗い。
そう、あの日と同じ──
『あんたの全てを奪って、壊して、とてつもない苦痛の中で殺してやりたかったの』
『あんたに味方なんているわけないでしょ?どこまでいってもあんたは1人ぼっちよ。これでさようならね。あの世で友達がいないことを悔いればいいわ。バイバイおバカなお姫様』
私の目の前には顔を醜悪に歪めたミリア。
あのときは周りに人がいたからか、ここまでひどい顔をしていなかったはず。
『何を言っても無駄だとわかっているから結論だけ。お前らは死刑だ。生きていても害悪にしかならない』
冷たい目をした無表情なお兄様の冷淡な声が響いた。
『お前のような者が俺の婚約者だなんて。俺の人生の汚点だ』
『お前なんか、死んでくれたほうがこの世のためだ』
顔がぼやけているが、綺麗な銀色の髪にアメジストのような紫色に瞳の人が目の前に立っていた。
サイラス様にはこんなことは言われていない。そもそも死ぬまで顔を見ることもなかった。
でもそう思われているのかもしれないと考えて。
それ以上考えないようにして、見ないふりをしていた。
彼にそんなことを言われたら、私はどうなってしまうのか。
ああ、これは夢なのね──
唐突に理解した、そのとき。
「はっ……」
目が覚めた。そこには見慣れてしまった天井があった。
ぱちり、ぱちり、とゆっくり瞬きをする。
今の自分の状況がわからない。私は何故寝ているのか。
夢見が悪かったせいか少し汗をかいており、心臓がどくりどくりと音を立てている。
人の気配を感じ、ゆっくりとそちらに顔を向けた。
すると、何故か私の手を握りしめてベッドの側に腰掛けているサイラス様と目が合った。
「!?」
「……エリー!」
先ほどまでみていた夢がすぐに蘇ってくる。
ガバッと起き上がり、彼に摑まれていた手を引き抜いて後ずさる。
「……エリザベス……!?」
声のほうを向くと、ドアが開いていてちょうどお兄様が入ってきたところだった。
髪色は見慣れた輝くような金色に戻っていた。
私の様子をみてなのか、ひどく驚いた顔をしていることがわかる。
『お前には失望した』
その言葉が頭に響く。
「……はぁ、はぁっはぁ……」
手が震えて、なぜか呼吸がうまく出来ない。目からは涙が溢れてくる。
怖い──
私の胸に広がったのは恐怖だった。
ここには、いたくない──
ただその一心で、咄嗟に転移魔法を発動しようとする。
「っ!待ってくれ!!お願いだ!!」
「?!」
それに気づいたのか、サイラス様は私の震える手を再度握りしめ、強く引き寄せ抱き締められた。その腕の強さに戸惑いを隠せない。
そしてこんな時でも。
転移魔法に無理やりついてきた場合、失敗したら体の一部が欠損する可能性があることが頭に過ってしまった。
そして生まれたその一瞬の迷いで、転移魔法はかき消えた。
「……っ!はぁ、はぁ、い、嫌っ……離し、て……っはぁ、うぅっ」
「大丈夫だ、大丈夫。ゆっくりと呼吸して。ここにいる人は全員エリーの味方だ。絶対に裏切らない」
「み、かた……?」
『あんたに味方なんているわけないでしょ?』
頭に響くのはミリアの言葉。
夢と現実の区別がついていない。いや、ついている。あれは夢ではない。前回の現実だ。
もう何がなんだかわからない。
でも頭が働いていないのはわかってる。
パニック状態というもなのかもしれない。
頭の片隅では冷静な自分が自分を分析している。
それでも頭で考えているものと感情がまとまらず、ぐちゃぐちゃのまま目からはとめどなく涙が溢れてくる。
そんななか、ただ思ったのは。
この人たちは……
私のことを殺したいほど憎んでいるかもしれないということ──
「い、嫌っ!離して!だ、誰か……!!ヴ、ヴォル……っ!!助けて!!」
咄嗟に出た名前は私を助けてくれていた人の名前だった。
私を抱きしてめいたサイラス様の体がピタッと固まった。
抱き締める力を緩め少し離れると、とても傷ついた今にも泣きそうな顔で私を見つめた。
「……姫さん、少し借りるよ」
いつからいたのか。誰に向かっての言葉なのか。
私のすぐ横から声が聞こえ、体が横抱きにされたと思った瞬間、視界が変わっていた──
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