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転生逆行王女の終活〜悪の王女が元凶に関わらないようにした結果〜  作者: はな


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11/25

10、出発

あけましておめでとうございます!

穏やかな1年になりますように.....



 翌日。体調はよくない、がしかし。処刑前の体調を思うと動ける。最悪の状態を知っていると、少しの体調不良がたいしたことのないもののように感じるから不思議だ。


「……よしっと」


 持っていくものも多くない。道中必要なものはグレイキャットにお願いした。

 何が必要か判断がつかないものも多いだろうから、プロに任せることにしたのだ。


 荷物を整理してみると、大切なものはとくに何もないことに気づいた。


(手紙だけは置いていくとして……)


 誘拐ではなく自発的にでて行ったことを示すためだけに置いていく。宛先は書いてないし余計なことも書いてない。


 約束の時間にはまだ余裕があるが、1か所寄りたいところがあった。

 視線を落とすと、長いくすんだ金髪が目に入る。

 私は机のほうに向かってあるものを引き出しから取り出した。

 私は勢いがなければためらってしまいそうで、その勢いのまま手を動かした──


 ◇◇◇


 お祖父様が亡くなってから来たこの離宮ともいよいよお別れだ。


(もう、きっと戻らないだろうな……)


 もう王宮に戻る気のない私は部屋を見渡す。何も思うことはないと思っていたが、自分で思っていたよりも感慨深く感じるから不思議だ。


「……さようなら」


 一言、誰にともなく決別の気持ちを込めて、その場をあとにした。


 昨日も転移魔法を試してみたら意外とすんなりできた。してみた感覚だが、十分な魔力量とイメージが必要なのかも思う。


 ふっと体に浮遊感を感じたと思ったら昨日来た噴水広場の端っこにいた。


(やっぱりできた……!!)


 2回目だが上級魔法ができたことがうれしくてにやけてしまう。咄嗟に手で顔を覆う。外套を被ってはいるが不審者である。外套がある分不審者なのかもしれないけれど。


 昨日帰る時は部屋に転移した途端、エレナがノックしたのでセーフではあったのだが、喜びに浸る暇がなかったのだ。

 距離によって消費魔力も違うようだが、離宮と城下からここまでだと全然余裕だった。


 用事を足すと約束の時間になったためグレイキャットに向かう。


 もう外套も被らずに、堂々と現れた私にヴォルが気づいて目を見開いて私を凝視した。


「……髪……」

「ええ、スッキリしたわ。似合わないかしら……?」

「いや、似合ってる。似合ってる、が……」


 そう、先ほど離宮を出る前に髪の毛をばっさりざっくり切ったのだった。と言っても肩につくくらいの長さだけれど。


 そしてちょっとしたお小遣い稼ぎとして先ほど売ってきたのだ。

 いつも親から蔑まれていた髪の毛。身分が高い女性は往々にして髪が長い。身分が高い女性にとって長く美しい髪は王侯貴族の証であり誇りなのだ。


 そもそも日常生活において、長い髪は邪魔になる。そして、長い髪を常に美しく保つにはお金がかかる。


 つまり、長く美しい髪は財力があり、多くの侍女や侍従を雇う家の出であることを示す印の一つになる。


 だからこそ私も、幼少期よりずっと長く美しい髪を保っていたのだ。でもそもそも私は王侯貴族からしたら質素な生活だと思うけど。


 そして王城を離れる私にとってはもうただ邪魔なモノでしかない。ショートヘアも普通だった前世の記憶が蘇った今となってはもうためらう理由はなかった。


(やっぱり平民の女性はそこまで長い人もいないわね)


 王宮の外に出たときに確認してみたが、平民ではやはりそこまで髪が長い人はいないようだ。頭が軽くなったので、ただただすっきりとしたというのが私の今の気持ちだった。


「それじゃあ、出発しましょ!」

「……りょーかい」


 結局、案内人として来てくれるのはヴォルのようだ。なんでもマイザーの方に用事があるようで。


 初めての馬車旅に少し不安はありつつも出発した。


 ◇◇◇


 馬車で5日。ようやくマイザーに辿り着いた。転移魔法のために途中いろいろな街を回って欲しいとお願いしたからか、少し時間がかかったかもしれない。


 体調も良くないからか、寝ていることも多かったが、転移魔法を使う時は転移したい場所のイメージが大切なため、街についたら声をかけてもらっていた。


 それにしても──


(やっぱり、王都は活気があったけれど……)


 辺境まできたからか、単に王都だけが活気があるのか。王都といっても私は少ししか知らないけれど。


 しかし王都から離れれば離れるほど、寂れて質素な身なりの人が段々と増えていくのがよくわかった。

 2年半後のクーデターへのカウントダウンはもうすでに始まっているのだと感じる。

 このマイザーもそこそこ大きな街のはずだが、閑散としていて人通りが少ない。


 この馬車旅の中でヴォルと話す機会も多々あった。魔石の検証もできたのでよかった。


 いくつか魔石を用意してくれたので、魔力を注入した。私が魔力を入れたこともバレてしまったが、それはまぁいいかと思った。誰でも出来るわけではなさそうだから。


 やはり色で効果が変わることと、魔石の大きさによって効果が変わること。また私の魔力が入っているが、石に注入したあとは誰でも使うことができることなどもわかった。


 話の流れで、何故マイザーに行くのかその目的を聞かれたとき答えることはできなかったが、代わりに口からでてきた。


「………私ね、16年間1度も家の外に出たことがなかったの。私は小さな世界で、自分はなんて不幸何だろうって思ってた。それでも生きていく上では何も不自由したことはなくって……それが普通だと思ってた。でもそれが普通じゃないことがわかったの。奪われるのはすぐなのよ」


 ひもじい思いをすることも、心を潰される思いをすることもなかったけれど。自分がいかに恵まれている環境にいたかも、今はよくわかる。


 だから、自分に出来ることを何かしたいと思った。


 これは私の贖罪だから──


 なんてことは言っていないけど。そのことを伝えるとそれ以上は何も追求されなかった。

 マイザーでひとまず拠点とするところは、グレイキャットの支部のお店のすぐ横の家がたまたま空いていたようでそこを確保してくれた。

 

 その家は家具などは全て揃っていたため、すぐに住んでも問題はなかった。

 多くない荷物の荷解きをして、馬車移動での疲れも相まってその日は早めに寝てしまった。


 そのせいで、明け方早くに目が覚めてしまった結果、あんなことになるなんて思ってもみなかった──


読んでいただきありがとうございます!

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