大罪VS大罪!
「『大罪スキル』……だと?」
「クフフフ、いいね。実にいい反応だ!」
そう言ってヤツ、【怠惰】はさらに口角を上げて心底嬉しそうに笑う。
「これから消え逝く貴方にご褒美です。いいですか、普段魔眼で使用しているのは『鑑定』『収納』『付与』『身体強化』『召喚』『強奪』といったスキルのいわば超級……クフ、貴方が好きな単語を用いればチート版というものだと言えばわかりますか?」
「…………」
「だが、貴方には理解出来ないでしょうが、我々は『その程度』の存在ではないのです!」
両手を広げ自らの存在を誇示してみせる【怠惰】。確かに、大罪の名を冠しているのだ。当然、並みの悪魔などではないのだろう。
「我々にはそれぞれ唯一無二の固有能力が備わっていました。それこそが『大罪スキル』!我等を魔の絶対主たらしめた真なる力なのですよ!」
随分誇張しているが、姉さんの話だとこいつら異空間に封印されてたんだよな……まあ今はどうでもいいけど。
「ちょっといいか?」
「クフフフ、今さら命乞いをしても無駄ですよ?」
「いや、そうじゃなくてさ」
「クフフ、なんです?時間稼ぎですか?」
「いやな、それって今俺に聞かせてよかったのかなって思ってさ。だってそうだろ?普通に考えれば俺はそれを六つも使える可能性があるんじゃないか」
俺だってある程度はこの魔眼を使い熟す自信はある。そんな俺にわざわざ新たなる逆転の一手となるヒントを与える意味がわからないのだが……。
「クフフフ、それは甘い。甘すぎです!貴方がこの『大罪スキル』を使うためには、ある条件を満たす必要があります」
「……条件?まあ、普通に考えれば魔眼を七つ集めるとかか?」
「エクセレンツ!そう、その通り!七つの魔眼を全て開眼し、【真なる七罪眼】に至ること。それ以外に貴方が『大罪スキル』を使えるようになる道は無い!」
「……だから、無理だ。そう言いたいわけか」
「お解りいただけたようですね。ではそろそろ……お喋りはここまでといたしましょうか」
そう言うヤツの『悪辣な黒』からいくつもの触手のようなものが生え、そのうちの一本が俺目掛けて振り下ろされる。
「こっちも様子見は終わりだ。【憤怒眼】!」
俺はすぐさま魔眼の力を発動し、その一撃を防御すべく顔の前で両手を交差させる……だが。
「ぐっ!」
「クフフフ、身体強化だけで太刀打ち出来るとでも……なに!」
黒い触手による一撃を受け、そのまま吹き飛ばされるように後ずさった俺だったが、五メートルほど下がった場所で踏み止まった。
「出し惜しみ無しなんでなぁ、ギアを上げさせてもらったのさ!」
「まさか……いきなり『狂戦士化』とは……。クフフフ、あっさりと消えてはくれませんね」
憤怒眼による身体強化には段階がある。通常の身体能力自体がすでに常人をはるかに上回る俺が、最大強化であるこの『狂戦士化』まで上げさせられるのは随分と久しぶりだ。
ちなみにこれ以上は身体にも精神にも負荷がかかり過ぎて制御出来ない。恐らくだが、この上はヤツの言う『大罪スキル』の領域になるのだろう。
「俺も、この間ライオンのおっさんに好き勝手されて少々苛々していたんだ。本気で殴るから簡単に倒れるんじゃねえぞ!」
そう言った瞬間、俺が立っていた場所の地面に激しい衝撃が響き、ヤツの耳にその音が伝わる時には俺の拳がヤツの視界を塞いでいた。
パンッ!
「チッ!だが、まだまだぁ!」
自動防御の名に偽りはないようだ。ヤツ自身の意識を完全に置き去りにする超高速の一撃だったのだが、それはフードの部分から伸びた新たな黒い手によって弾かれ、完全に軌道を逸らされた。
だが、これは予想の範囲内。俺はヤツの正面に立ち、さらに至近から連打を叩きつけていく。
「おおおぉぉーっ、らあぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁーっ!」
「クフ、クフフフ、クーフッフッフ!無駄無駄無駄ぁ、力任せの連打などこの『悪辣な黒』の前では何の意味も持たない!」
憤怒眼の狂戦士化での暴風の如き怒濤のラッシュ。その一撃一撃が爆撃並みの破壊力を持つまさに破壊の狂拳。
だが、圧倒的な破壊力を持つそれらであっても、その全てはことごとく次々生えてくる黒い手によって弾かれ、逸らされ、受け止められる。
高速で位置を変えながら全方位から攻撃を続ける俺に対して、その中心で一歩も動くことなく笑い続ける【怠惰】。
この『暗黒消滅空間』に引き込まれてなお、ヤツが随分と余裕でいられたのは、この『悪辣な黒』に対する絶対的な自信があったからなのだ。
「……ハァハァ、確かにたいした防御力だな」
「クフフフ。おやおやシンリ、もう疲れてしまったのかい?クフフフ」
いったい何十発、いや百発以上は撃ち込んだかも知れない。ただでさえ多大な魔力消費と身体的な負荷が大きい【憤怒眼】のそれもレベルマックスの『狂戦士化』を常時展開して使い続けているのだ。
俺は一旦離れて距離を取り、一時狂戦士化を解除する。
そんな俺を見てヤツは俺の魔力と体力が尽きかけていると判断したのだろう。再び師匠の口真似をして余裕を見せる。
「モノマネはやめろって言っただろ!それに俺だってまだ無傷なんだ。防御特化型のその能力では、よくてこのまま持久戦だろうに」
「クフフフ、貴方が好きそうなセリフで言ってあげましょう……いつから『悪辣な黒』が防御特化だと勘違いしていたああぁぁっ!」
ヤツがそう言い放つと同時。
身に纏う『悪辣な黒』から再び触手のような黒い手が生え、それが拳を握ったような形状で俺目掛けて放たれる。先ほど通常の身体強化では受け止められずに狂戦士化まで使って踏み止まったあの攻撃だ。
しかも……今回その数は二十発以上!
「攻防任せて楽できるから私は怠惰でいられるのですよ!クーフッフッフ、これで終わりだぁシンリィィィィッ!」




