夜の一戦
遅くなりました!総編集を終えたので投稿していきます
時刻は19時を過ぎ、空を星空と月が支配する時間になった。今日は森で一晩明かすことになりそうだ。太い木の枝を見つけてその上に飛び乗って寝転がる。固いベッドには慣れているから平気だ。
「さて…」
大鎌から魂を一つ取り出す。取り出した魂は頼りない星の光よりも明るく周囲を照らした。
明るくなったところで端末を出して《倉庫》と表示されているところに触れる。倉庫の中にはいくつかの木の実が入っていた。道中で木の実をとっておいてよかった。おかげでお腹も多少満たされるだろう。
さっそく一つ食べてみる。味は…正直微妙だ。食べられなくはないけれどあまり食べたい味ではない。だが、背に腹は代えられない。我慢して食べた。
木の実を全部食べ切って今日一日を振り返る。初めてVR機器を使って、デスゲームとやらに囚われて、魔法を使って、人を殺して。今日一日でいろいろと変わったなと思う。
「…そうだ」
魂をもう一つ取り出す。これは灯り用ではない。今からやるのは魂の改造だ。魂を自分の思い描いた形に変化させる強力な魔法を魂魄魔法は行使することができる。
「《操魂》」
この詠唱が開始の合図だ。魔力が手に集まり始めると同時に魂の形を思い浮かべ始めた。醜悪な怪物、見るに堪えない汚物、神を冒涜した造物、呪塊のような化け物。思い浮かぶイメージはひどいものばかりだ。だが、どのイメージも私が真に望んだものだ。歪んだイメージの影響か、手元の魂は色を黒く変え、形を歪に変えていく。その変化に魂が耐えられないのか、どこか苦しんでいるように見えた。
魂の改造が進むにつれ夜の闇も一層深くなっていく。強風で時々落ちそうになったりしつつ時間は緩やかに過ぎていっていた。
「うん?あれは…」
どれくらい経っただろうか。光の球を浮かべて何か集団のようなものがこっちを目指して歩いてきている。一度作業を中断して改造中の魂を大鎌へと戻す。やがて10人ほどの集団は私のいる木の前で停止する。
「私は《レベー・ルミナス王国》所属、第五魔法小隊隊長、名をリントという。真夜中にこんな場所にいたので声をかけさせてもらった。名前と所属国家を聞いてもいいか?」
一人の女が話しかけてくる。魂がざわつきだすのを感じる。だが、今日はもう動きたくない。質問に答えてさっさと去ってもらおう。
「…名前はしぃ、国にはまだ所属していない」
「国に所属していない?…あなたも異世界人なのか?」
「…?」
異世界人?どういうことだ?わけのわからないことを言い出して…この人らはNPCってやつなのだろうか。まったく見分けがつかない。とりあえず質問には答えよう。
「…多分、それであってる」
「そうか…。ならちょうどいい、我々は森の消火作業を終えて帰還している最中だ。よければどうだ、一緒にいかないか?」
もしかしてさっきの場所に行っていたのか?ていうことは死体を見られているのでは。いや、私が殺したなんていう証拠はないはずだ。死体も燃えて灰になっていてもおかしくない。すると一人の男がリントに話しかける。
「…隊長、少しいいですか?」
「ん?どうしたロン、何か」
「この魔法少女の魔力反応、先ほどの場に残っていた魔力の残滓と同じです」
周りのやつらはすぐにそれぞれの武器を出して警戒し始める。魔力の残滓なんてものがあったのか。そしてどうやら死体も残っていたらしい。…いや、骨は残るのか?
「…少し、ご同行願おうか」
リントも剣を出して威圧してくる。これはもう、むりだな。今日はもうこのまま寝たかったのだが。
「…《衝魂》」
「ぇあ、なに、が…」
「ッ!全員、散開!」
魔力の残滓がなんとかと言っていたやつを不意打ちで気絶させる。それを見た隊長は気絶した男を抱えて即座に指示を飛ばす。私も大鎌を持ち、木から飛び降りて一人目を殺すため一気に距離を詰める。外に出ている魂も私を追って光の球に負けじと辺りを照らす。
「あ、《水弾》!」
魔法を放って応戦してくるがそれに斬撃を飛ばして相殺する。相手の魔法に応対しつつ10の大鎌を放つ。女は捌き切ることが出来ず、7本目の大鎌に首を刎ねられた。
「レン!」
「次はお前…!」
「なっ…」
なにか叫んでいた男を背後から貫く。苦しそうな声をあげて地面へ倒れ伏していった。
「くそっ、《火輪》!」
「《氷槍》!」
「合わせるよ!《魔法効果増加》!」
相乗された強力な魔法が正面から私を襲う。斬撃を飛ばして炎の輪を相殺し、氷の槍を跳んで避ける。
「はあああ!」
追いかけるように2人が跳んで私へと迫ってくる。しかし甘い。私を起点に直径5メートルの範囲を無数の大鎌が飛び交う。2人の刃はは私に届くことなく切り裂かれて下へと落ちていった。
「《縛魂》」
《縛魂》は魂を縛り付けて金縛りのような状態を引き起こす魔法だ。範囲内にいたやつらは氷ついたようにピタリと止まる。そこへ大鎌を雨のように降らしていくと赤い絨毯を作りだしていった。これで何人殺しただろうか。たしかまだリントは殺していない。
「《加速》!」
そんなことを考えていたら、目の前にリントが現れる。大鎌が反射的に動いた。
「っ」
「反応できただと!?」
今のは、危なかった。反応が少しでも遅ければ斬られていた。後ろへ数歩退く。
「あとは、お前だけ?」
「ああ、そうだ」
リントは私を呪い殺しそうなほどの目で睨みつけてくる。なんだかその目が少し私にしているような気がした。
「そう、じゃあさっさと終わらせよう」
「ああ、終わらせてやるよ!《加速》!」
私の目の前からリントが消える。それと同時に背後から殺気。本能のままに大鎌を薙ぎ払う。
「《付与》《魂奪》、《偽魂》」
「ッ!《加速》!」
再び私の前から姿を消す。空から殺意を感じ見上げると同時に、無数の剣が私へと降り注ぐ。私も対抗するように無数の大鎌を剣の雨へと放つ。剣と大鎌の攻防。しかしすぐに終止符は打たれた。
「終わりだ!」
背後からリントの声。それと同時に私は心臓を貫かれた。
いや、私の幻影は貫かれた。
リントは真実に気づけなかった。肉が裂ける音。自分の腹から血が流れるているのを感じながら剣を落とし倒れこむ。
「ガハッ…、一体、いつから…」
「あなたが剣の雨を降らせる前から」
《偽魂》は相手の魂に影響を与えて幻影を見せる魔法だ。魂を狂わされたリントは偽りの私を見続けていた。
「く、そお…」
大鎌を振り降ろし体を二つに分ける。リントは内臓をぶちまけて絶命した。再び辺りを魂の光だけが照らし始めた。
×××××
「ふむ、遅いですね」
ある魔法士はそう呟いた。
「なんだか森の様子がおかしいですね…明日にでも本格的に調査をしたほうがいいかしら?」
アドバイス等があればよろしくお願いします。また戦闘シーンに自信がないので参考になる小説等教えてくれると嬉しいです。
(*・ω・)*_ _)ペコリ