逃避行
おまたせしました。投稿再開します。
ログインしてから3日目の朝、私は王国に所属することなく森で逃避行を繰り返していた。どうやら一人逃がしていたらしく、王国に着くなり指名手配がどうのこうのと調査隊や討伐隊といった組織に追われ始めた。殺しては逃げての繰り返しが続き、だんだんと休む時間が減っているような気もする。
合間合間の時間で魂の改造は一つだけ終わらせることが出来た。どのタイミングで使うかはまだ決めてないが、近いうちに使うことになるだろう。NPCに使うのはもったいない気もするが仕方ない。
端末を出して時間を見ると9時30分と表示されている。疲れは多少回復したが、木の実はほぼなく、空腹はそろそろピークだ。空腹感まで現実に近づけなくてもいいと思う。
それにもう時間がない。私はたった一人の家の中でゲームにログインしている。誰も訪れることもなく、誰にも心配されることもない。自分からログアウトすることができない状況で、現実で体の不調に耐えられず近いうちに必ず死ぬ。
なら、死ぬ前にその前に一人でも多く殺してやろう。
「隊長!魔力の残滓を確認しました!この近くにいます!」
「探せ!逃がしたらまた被害者が増えるぞ!」
「ッ、もうここまで…」
魔力で強化した聴力と視力でその存在を把握する。正面からぶつかるのは分が悪い。一旦引かなければ。
この数日間、なにも得られなかったわけではない。視力や聴力が強化できることに戦いの中で気づくことができた。視力を強化すれば数十メートル先の様子を簡単に把握できる。
聴力を強化すれば風で聞こえづらい状況下でも視力同様数十メートル先の声を聞くことが出来た。追っ手から逃げるのに役に立った。その過程で魔力の使い方にだいぶ慣れてきたような気がする。
足に魔力を集中させ、一気に加速して周りの景色を追いていく。このパターンも何回目だろうか。十から先は数えていない。今回はこのまま逃げて終わりだろう。
だが、今回は逃げた方向が悪かった。
「右方向から魔法少女接近!魔力反応は…例の魔法少女です!」
「ッ!こっちにもいたの!?」
「全員戦闘態勢!武器を構えろ!」
「…やるしかない。《付与》、《魂奪》」
大鎌を具現化させて一気に駆ける。だんだんと加速していき一番前にいた二人組に切りかかる。二人は抵抗する間もなく地面に倒れ伏していった。
「レジー!タム!くそ、《水激》!」
「《付与》、《纏炎》!」
「氷柱!」
「覚悟!はあああ!」
「…この程度なら!」
巨大な水の塊が木々を飲み込み、炎を纏った矢が穿たれ、地面から氷の柱が幾数本も飛び出してくる。さらにそれを掻い潜って一人の男が剣を構えて向かってくる。
男の一撃をを回避し、水の塊に吹き飛ばされた木に足をつけてそこから跳んでいく。矢を叩き切り、氷柱を叩き割る。そのまま木々や生成した大鎌を飛び移りながら弓使いの元まで肉薄し首を刈り取る。その勢いのまま大鎌を水魔法使いに向かって投げつける。避けることは叶わず、水魔法使いは凶刃に倒れた。
四人殺してあと五人。今度は数を間違えない。全員殺す。
「うおおおお!」
先ほどスルーした男が再度私に向かってくる。しかし私に刃は届くことなく、どこからともなく飛んできた大鎌の群れに全身を貫かれた。
あと四人、着々とその人数を減らしていく。
「くそぉ!撤退だ、俺が殿をする!」
「でも、隊長が!」
「俺はいい!さっさといけ!《付与》、《鋭棘》!」
隊長と呼ばれた男が仲間を逃がそうと槍を構えて私へと突撃してくる。
「お別れはすんだの?」
「ここで終わる気はないさ!」
「そう」
逃げていく三人に大鎌の雨を降らせる。幾百もの大鎌を捌けず、避けきれず、その体を無残に裂いていった。
「…ッ!おまえええええ!」
「?」
逃がすだなんて一言も言っていないのに逃がしてもらえるなんて思っていたのだろうか。それでキレるだなんてなんて勝手な人なのだろうか。見ていてイライラする。
連続突きを捌ききり、お返しにと二本の大鎌を飛ばすがそれを男は槍で貫いて破砕する。激情に駆られていても意外と冷静に見ている。それにあの槍、結構危険そうだ。
「《衝魂》」
「ッ!…ぬぐおおおお!効かんぞぉ!」
「なっ…」
魔法を破られ動転する。直撃した《衝魂》が破られるのは初めてだ。この相手は想像以上に強いのか?全力で殺しにいかないといけない。
そう判断すると即座に大鎌を幾百と作り出し男へ向けて射出する。それを俊敏に避けて私へと迫ってくる。追加で飛ばしても難なく躱していく。単純な物量だけではあいつを殺せないらしい。
「なら…《偽魂》!」
「? 何が、いやあいつどこに…、そこか!」
今度は影響を受けたのかまったく違う方向に矛先を向ける。なぜ《衝魂》は効かなかったんだ?まあいい。今は奴を仕留めよう。
「興ざめですね」
「なっ…!ゴフッ…」
がら空きになった背中に大鎌を突き入れる。引き抜いたと同時に地面に倒れ込みそのまま動くことはなかった。
「…よし、いこう」
血の絨毯を横目に私は王国から離れるように走っていった。
×××××
「…第3討伐隊、反応途絶しました」
「ふむ、そうですか」
砦内の対策室である魔法士は冷静に答える。部下のノエルの通信魔法の効果が切れるのはノエル自身が効果を消すか、死んだときの二つしかない。いま反応が切れたということはそういうことなのだろう。
「…これで何人目でしょうか?」
「100を超えたあたりから大雑把にしか数えてないので…130あたりでしょうか?」
ため息をつきつつ思案に耽る。被害は想像以上に及んでいる。魔法士団の中だけで見れば112人殺されている。また、森で発見された所属不明の死体…二日前から現れた異世界人と思わしき死体が3つ見つかっている。
もしあの日一人でも帰ってきていなかったら、例の魔法少女は国内で暴れまわって民間人にまで被害は拡大していただろう。それに、異世界人の活躍も大きい。異世界人の魔法で正確な顔まで暴けたのだから。
しかし、異世界人といってもいい人間ばかりではないのだろう。全員が等しく善人ならこのようなことは起こっていないのだから。
「ふむ、ノエル、地図をみてくれ。どの辺りで全滅したかわかるか?」
そういって地図を広げる。地図の元までやってきて「ここです」と指をさした。
「ふむ、だいぶ国境に近づいているな」
「どうしますか?トリストリアンに任せます?」
「いや、これは私たちの国の問題だ、貸しを作るわけにもいかない。なにより、仇を討たなければならないからな」
「では、行くのですか?」
「ああ、今から出る。このおにごっこを終わらせよう」
そう言って無難な服装から白色の軍服姿へと変身する。変身と同時に右手に持つガラス棒をくるくると回しながら。部屋を出ていった。
「…ご武運を、ティエル魔将」
アドバイス等があればよろしくお願いします。
(*・ω・)*_ _)ペコリ




