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破綻少女は死に想う  作者: 七天 伝
第一章 求めるもの
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休息を

遅くなりましたm(__)m

 呪塊が完全に黒い靄へと変わったのを確認して一度木を背にしてぐったり座り込む。端末を出して時間を見てみると3時をまわっていた。ここで一息いれたとしても夜までには間に合うだろう。地図を開いて見るとさっきより国へと近づいているのが目に見えてわかる。


「はぁ…」


 たった2時間、だけどすごく疲れた。動くのがダルい。


「ゲームってこんなに疲れるんだ…」


 最初は疲れることのない娯楽っていいな、程度にしか思っていなかった。実際転移前の白い空間内では10分くらい大鎌を振り続けていたが息切れをすることはなかった。

 

 でも転移した跡はやけに疲れる。体力的に疲れるというよりは精神的に疲れるというか、私のよく知らないベクトルの疲れを感じる。それは大鎌を振るったときや現実離れした跳躍をしたときとか。

 きっと私が知らない仕様のようなものがあるのだろう。 


 そんなふうに頭の中で色々思案し、時には何も考えないようにして目を瞑って。10分ほどぼんやりと休憩した。


 休憩を終えた私は肉塊の上に浮いていた光を回収して再び国の方へと足を向ける。道中の景色は変わらず森が続いている。風もこの森にいる連中なんぞ知るものかと吹き続けている。ずっとここにいたら風邪をひきそうだ。


 整備された道路や獣道なんかも見当たらない。目印になるような建築物もない。地図がなかったら迷子になっていただろう。


 あれから呪塊には会ってはいない。奴らと戦うのは時間と体力の無駄でしかない。このまま何事もなく国に着ければいいなとのんきに思っている。


 しかしその願いはすぐに打ち砕かれた。視界内に木々の間を掻い潜ってリス型の呪塊(カース)が迫ってくる。私と視線を交わして首を傾げたかと思うといつの間にか手に持っていた斧を振り上げて襲い掛かってくる。


「Kyururu!」


「…一体だけ?」


 呪塊の振り降ろした斧は私に当たることなく空を斬る。その隙を逃すことなく大鎌を呪塊の腹部に深々と突き刺す。最後っ屁のように小さく息を吐くとそのまま呪塊は黒い靄へと変わっていく。


「本当に一体だけ…?」


 休憩前に戦った時はもっと多くの呪塊たちが姿を現していた。なのに一体だけというのは違和感を覚える。警戒を解かずに辺りを見渡す。一つ一つ、細かく注視する。そして見つけた。


「何…あれ…」


 空中に真っ黒な穴があいている。大鎌を構えて近づいていくと、接近を感知したかのようにその穴から呪塊が現れる。ブラックホールのように周囲を飲み込むということはしていない。が、中からはいま倒した呪塊とまったく同じ姿をしたものがわらわらと湧いて数を増やし続けている。


「…さすがに多すぎる」


 逃げるという選択肢をするには遅すぎた。すでに奴らは私を視界にとらえて離さない。私を逃がすつもりはないらしく、皆一様に斧を構えて突撃してきた。




 どれくらい時間が経っただろうか。


「Kyuu!」


振り下ろす。


「KyuKyuu!」「KyuuuKyuu!!」


薙ぎ払う。斬撃を飛ばす。


「はぁ、はぁ、ッあとどれくらいであそこに着く…?」


 いくら斬って刺してもその数を減らすどこらか増やしていく呪塊に辟易する。100から先は数えるのをやめた。元凶があの黒い穴なのは明確なのだが、数が多すぎて一向に近づけない。むしろ少しずつ遠ざけられているようだ。

 斬撃を飛ばして穴を斬ろうとしても呪塊たちが身を挺して防いでしまう。実に献身的なことだ。さっきの卵型より丈夫らしく、その斬撃は防がれていく。

 疲れてきて集中力も落ちてきた気がする。これで一体一体が強かったらと思うと軽く悪寒がした。


「このままだと、体力切れで押し切られる…!」


 これ以上悠長にしていられない。一か八か打って出よう。


 飛び込んできた呪塊を斬り裂き勢いよく跳躍する。上を見上げる呪塊を見据えながら穴めがけて降り立つ。すぐさま穴を斬ろうとするがそんな簡単にはいかず、全方位から呪塊が襲ってくる。


「はああああぁ!!」


 大鎌を一閃。飛び掛かってきた呪塊たちは斧ごと斬られ、その姿を黒い靄へと変えていく。すぐに体の向きを穴の方へと向け大鎌を振り上げる。


「これで、終わり…!」


 肉を斬ったような感覚と共に穴は二つに分かたれた。分かたれてすぐにぐにゃぐにゃと形を変えてやがて溶けるように消えていく。周りに残っていた呪塊も穴と連動するように黒い靄へと変わっていった。


「はぁ…終わった…」


 大鎌を落としてその場に座り込む。さっさと飛び込んで斬ればよかった。そうしておけばこんなに疲れることはなかったのだ。数の暴力が恐ろしいのは()()()()()のに。


 思い出したかのように端末を出し時間を確認する。4時20分、空を見上げてみると夕日に包まれ始めていた。


「ゆっくり進んで、途中で野宿でいいかな…」


 少しくらい怠惰に過ごしてもいいだろうとそう考えてのっそりと立つと、どこからか声が聞こえてくる。


「…ぃ」


「ぉ…ぃ」


「おーい!聞こえるー!」


 遠くから私のほうへと真っすぐに向かってくる2人の人間の姿が見えた。


 まだ、今日をゆっくりと終わらせてはくれないらしい。私の心がざわつきだす。いまの戦闘が初期微動なら、どうやら今度は主要動がきたらしい。



アドバイス等があればよろしくお願いします




ペコリ((・ω・)_ _))

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