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表2話 「イスカと屋敷の神々」

 イヌキチさまとわかれてから、わたしはレーンさまにべつのおやしきにつれていってもらいました。形はちがうけど、つののお家よりもおおきくて白いので、たぶんとてもしんせいなばしょだとおもいます。それに、わたしのお家よりもずっときれい。神さまのお家って、すごい! ね!

 そのお家に入るときに、レーンさまがわたしになにかを言いました。どうやら、このしんせいなばしょに入るにあたって、てきせつなかっこうにならないといけないみたい。

 わたしが身をゆだねていると、レーンさまが、うつくしい、すきとおった紫いろのひもをとりだして、それでわたしを着かざってくださいました。わたしの神衣はおとなの時のままなのでだぼだぼしていたのですが、レーンさまがきれいな帯ひもを巻いてくださったので、身がひきしまります。


 そのままレーンさまを見おくり、りっぱなとびらのなかでおとなしくまっていると、レーンさまがそれはもう美しいおとなの女神さまと、村の全員をあわせたよりもかっこいい男の神さまをつれてもどってきました。

 すごい、ほんとうにうつくしい神さまたちだわ! 神さまたちってみんなこんなにきれいなのかしら?


 三人の神さまたちは、わたしがほんとうに天のにえ……『てんし』かどうか、はなしあってたしかめているみたい。ときどきわたしの羽を見たりさわったりして、しらべています。くすぐったくて、つい声がでてしまいました。


 少しして、男の神さまがやさしい笑顔になったので、どうやらわたしはみとめてもらえたみたい。よかった!

 わたしもうれしくなって笑うと、大きい女神さまが、それはもうすべての生きものをとろけさせるような笑みをかえしてくれました。

 この微笑みを見てひれふさないそんざいはいないでしょう。わたしはこの時はじめて、じぶんがほんとうにいだいな神さまのまえにいるのだとかくしんしました。

 神さまって、さいこうにすばらしい方たちです!


 その女神さまが、わたしを水場にあんないしてくださいました。どうやら神さまのおやしきの奥はさらにしんせいなばしょのようで、そのまえにみそぎがひつようなようです。さすが、神さまたちのお住みになっているばしょね!

 でも、みそぎはつめたいから、泣かないようにがんばらなくちゃ……。


 そうおもっていたのですが、すごい! さむくない!

 村のおやしろでしたときのような、さすような水うけのいたみがまったくありません。むしろつつまれるようなここちよささえかんじます。

 ああ……これがほんものの神さまのご加護をうけた水なのね……すばらしいわ! これにくらべたら、おやしろの御泉ぎょせんなんて、あんなものうそっぱちね! ただ夜にひかったり、きずが治ったりするだけだもの!


 みそぎのあとも、神さまが手からあたたかい神風をだしてくださったので、髪がすぐにかわいちゃいました。いっしょに風をうけていた、小さい神さまもうれしそう!

 それにしてもさすが神風ね、ものすごいはくりょくのある音がするわ!



 いちれんのぎしきをおえて、おくの間にとおされると、またべつの神さまがいました。その方は、ほかの神さまたちより年をかさねているようで、のっそりとしたうごきをしています。

 でも、あんまりきれいじゃない神さまね? 格がひくい方なのかしら? 使いの黒いケモノにもたいとうにあつかわれているし、きっとこのおやしきではいちばんしたっぱなのね。もちろん、わたしよりはずっと上だけど、笑顔の女神さまにはぜんぜんかなわないわね。


 そんなふうに大人のずのうでぶんせきしていると、とてもいいにおいがしてきました。かいだことのない料理のにおいだけど、すごくおなかが空くかおりです。

 そのいいにおいのスープと、見たことのない白銀のつぶつぶを、女神さまがわたしにもあたえてくださいました。やっぱり女神さま、大好き!


 みんなでおしょくじをはじめると、女神さまがなにかはなしかけてくださいました。しゅうちゅうしてみると、どうやらそれぞれの神さまのなまえをおしえてくださっているようです。

 女神さまはレナトゥス、美しい男神さまはタキトゥス、レーンさまはレントゥス、いっしょにみそぎをした小さい神さまがユキトゥス、使いのケモノがソーチというそうです。ほかにもなにかおしえてくださったけれど、もうしわけないのですけれど、今、わたしはそれどころではありません。

 だって、ごはんがすっっっごくおいしいんですもの!!

 おくちのなかが今までにないくらいあついけど、とーってもおいしい! わたしはあったかいのが大好きだから、あついのはへっちゃらだもの、おいしくいただけるわ!

 こんなにあたたかい世界で、うつくしい人たちにかこまれて、おいしいごはんをたべられるなんて、わたしはすっごくしあわせものね!

 わたしをおくりだしてくれた村の人たちに感謝しなくちゃ!



 ごはんのあとは、女神さまにくちのなかをきれいにしてもらって、ねどこにあんないしてもらいました。

 しもべであるわたしにたいして、せん用のねどこをよういしてくださるだけでもありがたいのに、これがまたすばらしいのです!

 しっかりとした足のついた、てんがい付きのねどこで、おおきな天まどはふだんは暗く閉じているのですが、ひとたび日がのぼればあたたかなひかりがふりそそいでくるのです! なんてすばらしいんでしょう! あったかいのだーい好き!

 まるで、お姫さまになったみたい!


 にえなのに、『てんし』なのに、わたしこんなにめぐまれていていいのかしら?

 いえいえ、このご恩にむくいるために、明日からしっかりごほうししなくちゃ、ね!


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