流浪
セイラは困ってしまった。
期日が決まっているバイトもあったのに。
何とか、家に入れないか玄関口で交渉しようとしても全くダメだった。
本当に困ってしまった。
突然、追い出されたのだから、当然お金も無い。
バイト先に行き、事情があって期日までに収められないかもしれないことと。
給与の前借りをお願いした。
すると、前借りはできないが、何と、あの雑貨屋に行くように指示されたのだ。
バイト先は例の入場チケットをセイラに渡してくれた。
セイラは不思議に思いながら、入場券を手に雑貨屋に行った。
いつものようにドアポストにチケットを。
自動で開く扉。
一歩踏み出し、現れたのは小さな鍵。
その下には紙があった。
示された場所に行ってみればこれまたこぢんまりしたアパートだ。
笑顔の明るいおかみさんが出迎えてくれた。
ご夫婦で経営している、単身赴任者用のアパートだと言う。
案内された部屋の中は家具も備わっていた。
クローゼットの中にも衣服が揃っている。
すべてが揃っていて安心・・・ではない。
セイラは手持ちのお金が無いのだ。
宿代も収めなくてはならない。
おかみさんに言うと、
「心配いらないよ。」
と、カラカラ笑った。
「部屋の中に小さな金庫があったろ?そこに仕事が入ってるから。」
そう言われて見てみれば、仕事に必要な道具が一式と、指示書が入っていた。
セイラは一心に仕事を行った。
今までケインに気を使っていたから、そんなに出来なかったけどもここなら集中できる。
集中して色んな事を忘れていたかった。
完成した写しや、書類は、おかみさんが届けてくれる事になっている。
けれど、速く次の仕事が欲しいセイラは、自分で届けると言った。
久しぶりに王都を歩いていると、突然、声をかけられた。
巡回中らしいケインだ。
セイラは警戒した。
ケインは外だからか、そんなに威圧的な態度では無かったが、ぶっきらぼうに
「荷物を回収しろ」
と言ってきた。
訳がわからないけども、仕事先から預かった物がある。
回収させて貰える内に行った方が良い。
取りに行くと、一つの箱に収められていた。
中にはぐしゃぐしゃに書類が入っている。
机の上にあった物をかき集めたよう。
「私の荷物はこれだけじゃないわ。」
「いいや。俺がプレゼントした物ばかりだろう?後はウチの実家がお前に買ってやったものだ。だから所有権は俺にある。」
「そんな!私の実家から持ってきた物だってあるのよ。」
「もともと俺の家から搾取して得た利益で買ったものだろ?」
そんな事を言われて唖然とした。




