3、婚約者の態度
中でも困ったのは、無視だ。
ケインはここぞと言う場面で無視をしてきた。
学園でもパートナーを組む授業というのはある。
例えばダンス。
例えば、エスコートの授業。
そこで婚約者なのに、無視をされてしまえばセイラの立場が無い。
いないもののように扱われ声をかけても背中を向けられる。
セイラは諦めて、壁際に立ち、ひたすら他の人と踊り、他の人の手を取る婚約者を眺めるしかなかった。
それを見た一部の同級生はセイラを嘲笑い、一部の同級生はケインを宥めてくれた。
それでもしばらくは止めなかったが、見咎めた高位貴族に注意されてから最低限のエスコートはされるようになった。
たが、人の目がないところでは、ケインは好き勝手に行動し、男女問わず交友関係を広げていった。
対してセイラは、同性の友人もおらず、静かに過ごしていた。
婚約者のケインたっての頼みで、治政や、魔術の授業を選択したお陰で、女生徒と距離が出来てしまってたのだ。
完全に浮いた状態で、セイラは学院を卒業した。
卒業後は、実家に帰ったのだが、やはりよそよそしさはあった。
アーデン家では、もうセイラがいないのが普通になってしまっていたのだ。
弟妹ですら、よそよそしい。
仕方なく、ラグナート家に毎日の様に通い、家政を取り仕切った。
その内、また、住み込むようになってしまった。
ケインは学園を卒業した後の就職先を、騎士団に決めていた。
その為、学院の在学中に騎士団の見習い志願し、実績を積んでいた。
性に合ったらしく、成果を上げたという得意げな手紙が良く届いた。
内容は、危険な任務に勇敢に飛び込んだ。
その後、上司に向こう見ずだと注意された。
納得いかない。
みたいなことばかり。
ケインは愚痴りながらも、積極的に動いたお陰で功績を残し、名を上げていった。
レグナートの両親もケインの親ということでお茶会やパーティに呼ばれることが増えていった。
セイラも婚約者ということで同席させられた。
そこで、変わったケインの姿を目の当たりにする。
女性に囲まれ、チヤホヤされているケイン。
かつては病弱で癇癪持ちだったケインの面影は無かった。
パーティや、お茶会に呼ばれる度に、ケインとレグナートの両親の態度が目に見えて変わっていくようになった。
段々、尊大に。
セイラは何だかおかしいと思いつつも逆らうことが出来ない。
逆らっても、行き場所が無いのだ。
そんな弱い立場を見透かすように、ケインが学園を卒業し、正式入隊する時に、セイラにタウンハウスで一緒に住んで世話をするようにと言ってきたのだ。
ケインの世話をするように。
さすがにお人好しのセイラでも、躊躇した。
婚約者とはいえ、婚姻前である。
一つ屋根の下に住むなんて事はできない。
そう一度は断ったのだが、将来、結婚することが決まっているのだから同じ事。
ケインの仕事が落ち着いたらすぐに結婚式をあげる。
そんな事を言われて押し切られてしまったのだ。
何しろセイラの両親だって同意しているのだ、ただの令嬢であるセイラには何の権限も無い。
同居が始まってから、ケインの言動は益々酷くなっていった。




