2、婚約者との関係
こんな行動をするセイラを醜いのかと思う人もいるだろうが、決してそういう訳ではない。
美しさの系統が違うのだ。
例えるなら、かすみ草。
セイラは淡い色、シンプルなものを好む。
性格も内向的で、読書や、刺繍をしている方が落ち着く。
けれど、婚約者のケインは違う。
ケイン・レグナード。
20歳。
王都で、今、最も注目される若い持て囃される騎士。
甘い顔立ち。
実力も人気もあり、社交的。
全く正反対の二人が何故婚約者になったかと言うと、二人は幼なじみなのだ。
領地がとなり同士の両家は、二人が産まれるまでは、どちらかと言うと仲が悪かった。
と、いうのも両家とも子爵家。
ほぼ同時期に男爵から子爵に格上げになり、微妙なライバル関係にあった。
代々続く微妙な緊張関係。
その上、セイラはケインの二つ上。
本来、婚約者になるはずではなかった。
だが、ケインが産まれたことで状況が変わった。
ケインが病弱だったのだ。
その治療費を稼ぐ為にケインの両親は必死で働き、プライドをかなぐり捨てて、アーデン子爵家に縋った。
セイラの両親も鬼ではなかったので、一緒に事業を興したり助け合った。
両家の親たちが忙しくなり、結果、セイラがケインの面倒を見ることになった。
小さい頃のケインはセイラになついた。
いや、独占欲いっぱいだった。
セイラが他の人と話すだけで癇癪を起こして手がつけられなくなるほどに。
とうとうレグナート家から婚約の打診をされ、アーデン家では最初、難色を示した。
理由は明快。
ケインが病弱だったからだ。
ケインの強い望み。
ケインの両親の懇願。
それから、セイラのお人好しさで成った婚約。
婚約者という確かな絆が出来たおかげだからだろうか、ケインの癇癪はおさまった。
セイラが頻回・・いや、家に住み込む程に世話を見たお陰か、薬を飲み、病気療養に専念できるようになった。
そのお陰で、ケインの病は完治した。
今までの分を取り戻すかのように動き回る姿を見て、ようやくセイラも安心し実家に戻ることができた。
ただし余りにも留守にしていたために、家族とはギクシャクしてしまっていた。
弟妹が産まれたこともあり、セイラの居場所はなかった。
セイラは、そのまま王都の貴族学校の寮に入った。
一抹の寂しさを感じながらも、セイラは学院生活に胸を弾ませていた。
なにしろ、ケインにまとわりつかれない、完全なる一人時間。
セイラは開放感を感じていた。
次にセイラが望んだのは、友人作りだった。
いつもケインと一緒で、家にこもりきりだった。
当然、友人もいない。
セイラは、年相応の体験をしたかった。
女友達を作り、お喋りしたり、お茶会を開いたり、招かれたり、お買い物に行ったり。
そんな、細やかな願いは、すぐに絶たれた。
ケインからセイラを縛るような手紙が頻繁に送られてきたのだ。
離れていても、婚約者としての責務を忘れないように。
努力をするように。
他の人間と交流しないように。
相変わらずの独占欲と、上目線の言葉にセイラは、苦笑した。
小さい頃からケインは優位に立とうとして、セイラに指示をしようとするのだ。
「どんくさいから。」
「ぼんやりしてるから。俺が言ってやんないと。」
そう言って、口を良く挟んできた。
成長してきてもケインは変わらない。
セイラの中ではいつまで立っても小さな駄々っ子のような存在だ。
もう、ケインの言うことを聞かなくとも良いのではと思ったのだが、両家の親からも言い含められて、セイラはケインの言うことを聞くしかなかった。
しかも、毎日どのように過ごしたのかを書き留めて、定期的に送るようにとまで指示される。
その上、将来に役立つような講義は全部受けて、良い成績も治めるように。
なんて言われて、取れるだけ講義を取ったお陰で、人と交流する時間は無くなった。
素養の無い魔術なども選択したお陰で、セイラにとって良い成績を治めるというのは本当に難しいことだった。
ひたすら、学業に取り組んで二年。
遅れて入ってきたケインの変わりようにセイラは驚いた。
別人のようにたくましくなっていた。
いや変わったのは外見だけじゃない。
性格も変わっていた。
反抗期の子供のようにセイラに反発する。
一番近い存在が両親よりもセイラなのだから、仕方ないかもしれない。
今までは可愛いわがままで許してきた事が多かった。
だが学院ではそうはいかない。
セイラはケインの反発に困ってしまった。
その様子を見たケインは、更にセイラを困らせる行動に出てきた。




