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『欲しいものが見つかる不思議な雑貨屋~婚約破棄された令嬢は新しい人生を手に入れる  作者: 佐藤なつ
不思議な雑貨屋

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1、欲しいものを探して

欲しいものが見つからないの?

じゃ、あそこに行ったらいいよ。

あそこなら、絶対あるから。


ちょっと前から、そんな評判を集める店が王都に現れた。

表通りから一本奥に入ると突然、ポンと出没する。


不思議な事に、あったはずの周囲の建物は消えてしまい、こぢんまりとした小屋が現れる。

絵本に出てきそうなかわいらしい外観。

小さいのに、店内に一歩踏み入れれば、その客が求めるものが現れる。

それがどんなに稀少なモノでも。

そう入手困難な人気の新刊。

某作家の絵画。

異国の香料。


小さな物から大きな物まで。

叶わないことはない。

真偽は不明だが、そう噂されている。


セイラは意を決して裏通りへ足を踏み出した。

評判の店へのチケットを手に。


一瞬、霧のようなものに包まれ視界が塞がれる。

周りの建物がなくなり、小屋が現れた。


セイラが入るのは二度目。


人気がある為、予約制。


買っても買わなくても、入場料まで取られてしまう。

子爵令嬢のセイラが頻繁に来れる場所ではない。


セイラ・アーデン子爵令嬢と書かれたチケットをドアポストに入れる。

すると、キィと音をたてて扉が勝手に開いた。

何も無い、がらんとした中に一歩踏み入れる。

触れていないのに扉が閉まる。

セイラの視線は不思議な扉を追いかけた。

前もそうだった。

どんな仕掛けになっているのか。

そう思ったが分かりようも無い。

振り替えると店内には既にアクセサリーが陳列されいた。

並んだ宝飾品はすべて大ぶりで派手な輝きを放っている。


セイラが探していたものだ。

特に陳列されているような、派手な宝飾品。

まさしくこれだ。

と、いう品物ばかり。


いつもこうなのだ。

店に入った瞬間は空っぽなのに、一瞬で品物が現れる。


どういう仕組みかは誰も知らない。

魔術に心得のある店主が営んでいるらしいという噂があるだけだ。


あざやかすぎて魔術だけじゃなく、心を読む力もあるのではないかとセイラは思っている。


セイラはその中で、ひときわ大ぶりで華やか・・・いや派手な髪飾りを手にとって、

「これならケイン様も喜んでくれるかしら。」


そう呟いた。

けど、声は、わずかに揺れている。

掲げ持つも、どうしても髪にあてて見ようとは思えない。

鑑賞物としては見事だ。

細工も素晴らしい。


だけど、当てる前からわかるのだ。

これは、自分に似合わないと。


視線を逸らすと、先ほどまでなかった鏡が現れていた。

しかも三面鏡。

店主の心遣いが伝わってくる。


髪に当てれば、ちょうど写る位置でぴたっと止まっている。

無駄に高度な魔術を使う所なんて、誰かさんを思い起こさせる。

そんな事を思ったセイラは、見ない振りで視線を床に落とした。


セイラが身に纏う、鮮やかな深紅のデイドレス。

裾には華やかな意匠が施されている。

布地としては美しい。

仕立ても見事。

けれど、それを着ているのが自分だと思うと、しっくりとしない。

これは、好きな色ではない。

好きな意匠でもない。

圧倒的な色味と装飾に、自分が押しつぶされている気がする。

萎縮する自分。

その一方で、このままではいけない。

自分は変わらないといけない。

自分に言い聞かせて、意を決して、セイラは胸を張り、鏡の方に向き直った。

セイラの視線がドレスに落ちたのを察してか、鏡が姿見に変化していた。

厭味な程に、こちらを観察している。

しかも逃げ場を無くしてくる。

目を反らすこともできずに、全身が映る。

そして、はっきりと認識した。

似合っていない。

残念としか言いようがない。

思わず、目を閉じた。


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