現れたのは
皆が振り向く。
入り口から真っ直ぐに進んでくる男がいた。
小柄で、黒いローブを翻したその姿。
長い前髪に隠れてはいるが鋭い眼差しが向けられているのがわかる。
「あれは・・もしかして、アステルでは?」
「あの。変人の?」
「いや、天才の。」
「最年少王宮魔術師が・・。」
「いや、隠居したって聞いたぞ。」
「なんでこんな所に?」
ざわつく周りを全く気にせず一直線にこちらに歩んでくる。
そして、エルミナの真ん前に立った。
「なんだか不愉快な事が起きている。」
つっけんどんな言い方。
「そのアクセサリ。お前のものじゃない。」
キッパリという。
「な・・あなた、何?無礼ね。」
「お前こそ誰だ。」
忖度しない態度。
「泥棒め。」
一言で切って捨てる。
「なんて失礼なの!」
エルミナは激昂した。
「お父様!何この人。つまみ出して頂戴。」
だが、誰も彼も動かない。
「なんで!」
「つまみ出されるのはお前の方だ。泥棒。」
「なんて、無礼なの!」
「無礼なのはお前だ。それは、俺の店の商品だ。」
アステルが暴露する。
それで、皆がざわめき理解した。
「王都裏通り・・番地。」
場所までハッキリ言う。
やはり、あの雑貨屋。
それは、彼の店だったのだと。
それで合点がいった。
小さな外観でありながら、中は快適に保たれ、客に合わせて内装すら変える。
無駄に高度な魔術を使う。
高位な魔術師の気まぐれで経営されている。
そういう認識は合っていたようだ。
「で・・でも、それがどうしたとおっしゃるの?」
どんな証拠があって私に言いがかりをつけるのか。
そう令嬢は言った。
その言い様にアステルは鼻で笑った。
「俺が趣味で初めて、趣味でやってる商いだが、誰に何を売ったかすべて記録が残っている。」




