茶番
セイラは用意された物をを身につけて、出席した。
会場入り口では奥様達がぎょっとした顔で見ている。
まさかセイラが来るなんて。
そんな顔なのだろう。
セイラは弁えていたから壁際に立った。
いつだって壁の花だったのだから。一緒だ。
ケインはいつものように女性達と楽しげに話している。
ケインはチラチラとセイラを見て嫌な視線を送る。
セイラは、もうケインが子供ではないのだとつくづく思い知った。
子供の頃は、良く意地悪な事、悪戯をした後、チラチラセイラの反応を気にしていたのだ。今も、同じ行動のように見えるけども、あの時感じたケインを可愛いと思う気持ちは霧散してしまっている。
どちらかと言うと嫌悪感しか無い。
ケインは変わらずチラチラ見ながら、中央に歩み出る。
そして、大きな声で、一人の女性の名を呼んだ。
仰々しく
「麗しの我が女神エルミナ嬢。」
そう呼ばれて、満面の笑みでエルミナ嬢が登場した。
彼女は見覚えのある物を身につけていた。
美しい、耳飾り。
そして、揃いの金細工が美しいネックレス。
それからブレスレット。
あの店のプレゼント。
息をヒュッと飲み込んだ。
そこにケインが声を上げた。
「皆に知らせておきたいことがある。」
会場の視線を集めケインは意気揚々と告げた。
「ケイン・レグナードは、一生の思いをこのエルミナ嬢に捧げる!
高らかに宣言をした。
会場がざわめいた。
「アーデン嬢は?」
「婚約者では?」
その声に、ケインは鼻で笑った。
「いやいや、お集まりの皆様。どうぞ聞いてください。この女!」
そこでビシッと指を指されてセイラは身じろいだ。
視線を一身に浴びる。
追撃するようにケインが言う。
「不貞を働いたのです。」
その言葉がセイラから言葉を失った、
「最近、金遣いも荒く。家政を任せていたのだが使い込みが発覚した。証拠もある。」
「違う・わ。」
掠れた声でセイラは言う。
なんとか絞り出した声だ。
でもかき消されてしまう。
エルミナの、
「なんてことでしょう!」
と、言う声に。
「だから、あんなに派手なアクセサリを身につけて!あんなドレス着ていらっしゃったのですね。」
「そうなんだ。」
二人の茶番が繰り広げられる。
周囲の奥様達もおかしいとはわかっているのだろう。
だけども、高位の令嬢であるエルミナの言葉に反論することはできない。
皆、気まずそうに目を泳がせている。
これは、セイラを悪者にして婚約破棄をしようという茶番なのだから。
場を乱してはいけないのだ。
皆の前で婚約破棄を宣誓されて、セイラの不貞を詰られて。
セイラの貴族令嬢としての人生は終わりを告げた。
かと、思われた。
「違うな。」
一言、ぶっきらぼうな声が会場に響いた。




