第十三話:なんかのフラグ
◇高槻・紡君の目線◇
現在、僕達はなんとなーくぎこちない距離感を、維持したまま、学校までの道のりを歩む。
「きょ、今日も、あ、暑いね! 詩歩さん」
「そ、そうだね! 紡君……」
お母さんが今日、僕に向かって伝えた言葉。
(一緒に男女が眠るなんて普通やんないでしょ。狂ってるわよ)
言われてみたらそうなのかも知れない!
友達同士で眠るなんて事すら聞いたことがない!
隣りにいる彼女をちょっとチラ見する。僕より少しだけ小さい彼女がニッコリ微笑んで、僕を見る。僕もぎこちなく笑い返す。
——僕は今日、こんなに可愛い女の子と一緒に眠ったのか……!
驚愕なんだが。
恐れ多い気持ちとともに、今日あった、一連の流れを思い出そう。
AI作家にブチギレる。何故か彼女が僕の胸の中で泣く。
その後一緒にAIを倒そうと、彼女が提案し、二人で……。
毛布の中で肩を寄せ合いながら一緒に物語を書いて。
その後寝落ちして。
(確かに割と狂っているのかも知れない……!)
狂ってはないか、でもこれって、付き合ってる二人がやることだよね。
お互いがお互いの事を好きだから、出来ることだよね。
なら、僕は詩歩さんことが好きだから、彼女と眠ったってことになる。
もう一度、彼女の方を見る。
そうなると、詩歩さんも僕のことが、好きだから、一緒に眠ったってことになるのかな……?
彼女も僕と同じ事を考えているのだろうか。
彼女も彼女で『私、彼のことが好きなんでしょうか……?』なんて考えているといいな。
これ、ラブコメだったらどうなるんだっけ。
自分の気持ちに気づいた二人は、告白とかして、お付き合いとかをするんだっけ。
それで一緒に手を繋いだりして、浴衣デートとか、海に行ったりとかするんだっけ……。
でも、どうせなら二人だからこそ出来る事をしたいな。
書店巡り。二人でお互いの好きな本を紹介したり、全く知らない本を二人で買って読んだり。
気分転換の散歩。コレはデートじゃないか。でも今まで一人でやっていたことを、二人でやる。
それで終わったら二人でベンチでくつろぐ。
……。いいな。それ。ちょういいな。
ああ、好きです。詩歩さん。
◆
私は内心、臓腑が焼けるほどに動揺しています。
紡君のお母様とのやりとりが、私の脳内をリフレインしているからです。
(紡とは付き合っている……?)
(えいええええええええ!? つ付き合ってません! 付き合ってなんていませんよ!)
とか……。
(詩歩ちゃんはそもそも、付き合うの定義ってなんだと思ってる?!)
(えーっと、一緒に手を繋いだり、キスをしたり、一緒にお風呂を入ったり……?)
とか。
思い出せば思い出すほどに滑稽です。だって……。
——ずっと動揺してませんか!? 私! ——
いやもう隙だらけですよね。誰がどう見てもなにかを隠しているようにしか見えません。まあ私達は付き合っているわけでは本当に無いのですが。
それに我ながら、おかしいです。
一緒に寝ておいて、手を繋いでないなんて。
段階をスキップしすぎです。それに警戒心もなさすぎでした。
でも……。と、彼を横目でチラと見ると、たまたま彼も私のことを見てくれています。
そんな偶然が嬉しくて、私は彼に微笑み返します。
でも……。
暖かかったな。彼の体。
もう残り学校まで五分というのに、彼の体温を私は思い出しています。
なんででしょうか。
昔から、男の人のことは好きではなかった。
恐らくそれは、度重なる告白にうんざりしてきたからだと思います。
勿論、最初の方は嬉しかったのですが。告白される度に段々と私のストレスになっていきます。
告白の返事も、「ごめんなさい」から段々と雑なものになっていきました。
ある者は一目惚れをしたと言ってきました。私はあなたに一目惚れしていませんと断りました。
ある者は性格が好きと、一度も話したこともないくせに伝えてきました。
ある者は、君のことが知りたいと言う。ならば知った後に好きになるべきでは? なんて意地悪なことも言ったりもしましたね。
今は、どうでしょうか。もし紡君が『好きです。付き合ってください』なんて言ってきたら。そして実際にお付き合いをしたら。
(……一緒に手を繋いだり、き、キスをしたり、お、お、お風呂に入ったり……?)
私はなんてことをお母様に言ってしまったのでしょうか。コレではただの色情魔では? 仮にお付き合いをしたとしても、お母様には報告がしづらいです。
(……早く紡君、告白してくれないかな)
私からは絶対にしません。だって、ヒロインなのですから。
だって、彼は私のことをヒロインって言ってくれたんだし。
紡君には、精一杯格好をつけてもらいます。そして不器用にでも、情熱的にでも良いので、私の初めての恋人としてふさわしいシーンを演出してもらいます。
(……告白されなかったらどうしましょうか……)
いいえ大丈夫。
彼は絶対に私のことが好きです。
だって私も彼のことが好きなのですから。
信じてますよ。
ね? 紡君?
いや落ち着いてください。私。
駄目です、他人任せにしては……。
紡君も動揺している可能性もあるし、私から告白スべき……?
でも、私からはちょっと恥ずかしい……。
閃きました!
今日誘導しましょう!
紡君が告白できる舞台まで!
そうですそうです! 二人きりになって、甘い空気を作れば良いんです!
そうと決まれば!
私は脳内で演算を開始します。
授業中……。無理です。人が多すぎます。ここで告白してくる人間は正気ではありません。
お昼休み……。ここは外で二人になれるように誘導できます。食堂ではなく、購買に誘導しましょう。
放課後……。余裕ですね。幾らでも二人きりになれる場所があります。
プロット作成完了!
絶対に今日! 彼に告白させます!
ひろ子さんはあいつを論破したい!
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ラブコメです、こっちもよろです。




